Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2013年5月23日 No.3131  「朴槿恵政権の国家戦略と今後の日韓関係」で論議 -21世紀政策研究所が講演会を開催

講演する韓国国会議員の安鐘範氏

21世紀政策研究所(米倉弘昌会長、森田富治郎所長)は4月18日、東京・大手町の経団連会館で、韓国経済研究院(全国経済人連合会グループのシンクタンク)と峨山政策研究院との共催で講演会を開催した。2012年の韓国大統領選の選挙公約策定に重要な役割を果たし、現在も朴槿恵大統領の政策推進の核心的役割を担う、セヌリ党・韓国国会議員の安鍾範氏を招き、講演の後、深川由起子早稲田大学政治経済学部教授と対談した。

まず、安議員が「朴槿恵政権の経済戦略と韓国経済の見通し」と題して講演した。安議員は、急速に進む少子高齢化や貧富の差の拡大といった韓国経済を取り巻く環境の変化について紹介。次に、朴槿恵政権の政策フレームワークである「信頼回復」に対する考え方の紹介やITを活用した Creative Economy (創造的経済)による経済政策の推進について説明した。最後に、朴槿恵政権が掲げる2013年の経済政策目標として、(1)雇用の増加(2)国民の生活環境の改善(3)経済の民主化(4)危機管理機能の強化――の四つを示し、低迷する経済から早期に回復を図ると述べた。

続いて、安議員と深川教授が「朴槿恵政権の国家戦略と今後の日韓関係」をテーマに対談を行い、朴槿恵政権の国家戦略を多角的に浮き彫りにした。

まず、深川教授は、大手志向が強い国民性でありながら中小企業の育成が急務であること、政府への不満が大きい一方で官僚至上主義社会であることなど、韓国が抱えるジレンマを指摘したうえで、今後どのようにこれらが解消されていくのかを安議員に問いかけた。安議員は、これらジレンマの解消のためには、経済、政治、社会における信頼基盤の早期形成が重要であるとして、雇用制度の改革や省庁横断型の行政システムの構築のほか、安定した社会保障システムの構築を実現していくことにより、社会の不満や不均衡を解消していくと答えた。

今後の日韓関係について深川教授は、市場構造が類似する日韓は、協力体制を構築することにより市場規模を格段に拡大することが可能であると指摘。また、従来のように家電や自動車の輸出量を競い合うよりも、雇用を生む観光や医療、農業、サービスといった分野で協力していくことにより、リスクの抑制やイノベーションによる新しい価値創造ができると述べ、今後の日韓の技術開発やイノベーションに対して期待を表明した。安議員は今後、日中韓の三国はITを活用しながら協力することにより、価格競争から脱却し、内需の拡大に加えて北東アジア全体の市場拡張を導き出すことができると述べた。

なお、講演会を共催した日韓の三つのシンクタンクは、翌日、合同ワークショップ「Economic Policies for Further Growth of Japan and Korea」を開催し、日韓経済の成長の関係について、人的資源、地域・産業政策、社会福祉政策の三つの分野をテーマに意見交換した。

【21世紀政策研究所】