Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2013年7月25日 No.3140  「持続可能な未来に向けた科学・技術の課題」 -日本学術会議の大西会長が常任幹事会で講演

講演する大西氏

経団連は3日、東京・大手町の経団連会館で常任幹事会を開催し、日本学術会議の大西隆会長から、「持続可能な未来に向けた科学・技術の課題」と題する講演を聞いた。
講演の概要は次のとおり。

■ 研究プロジェクト「Future Earth」とは

Future Earthとは、地球環境の危険な変化に警鐘を鳴らしてきた大気、海洋、陸地や地殻の観測者が、政治、経済・産業、生活・文化等の研究者と協働して、地球規模の問題をより強力に提起するために、ICSU(国際科学会議)と国連機関等で準備を進めている研究プロジェクトである。人間の活動と地球の変化の相互作用を統合的に考察し、持続可能な地球社会へと導くための取り組みである。2014年中頃からプロジェクトが本格的に始まり、国際的には15年が大きな節目の年になる。

プロジェクトの研究課題として暫定的に、(1)地球システムの変化の観測(2)政策や人間行動の変化に着目した地球システムの変化(3)地球変動を科学的に評価する取り組み(4)若手研究人材の育成――などが挙げられている。

■ Future Earthへ至る道

Future Earthへと至るまでに、いくつか議論があった。国連のブルントラント委員会の最終報告書では、持続可能な開発を中心的な理念に置き、00年9月の「国連ミレニアム宣言」では、「持続可能な開発」のために15年までに達成するという期限付きの八つの目標、21のターゲット、60の指標が掲げられた。国際的な議論では、環境と開発に加えて、貧困撲滅、教育普及、ジェンダー平等、健康についても重視されるようになり、12年の「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」の合意文書「持続可能な開発目標Sustainable Development Goals(SDGs)」では、15年以降の新たな開発目標を設定することとされ、15年が一つの節目の年とされた。

Future Earthに至るもう一つの道は、地球観測である。1980年代以来、次々と地球観測の世界的なネットワークが設立され、人間活動と環境変化との関係をテーマとする研究も増えてきた。地球環境研究が多方面に広がるにつれ、それらのネットワークを再編統合・合理化する必要性が生じ、結果としてFuture Earth研究プロジェクトへの統合が進められてきた。

■ 日本にとってのFuture Earth

日本にとって、このプロジェクトには三つの意味がある。一つ目は、自然災害を地球の一つの現象ととらえ、災害大国として、災害を切り口に地球環境を考えることである。二つ目は、日本が抱える人口減少社会における課題解決が、持続可能な社会を実現していくうえでも重要だと認識することである。三つ目は、日本の科学界がこのプロジェクトをきっかけに、より国際化されることである。

今後このプロジェクトに積極的に関与する主体が増えていくことが必要である。持続可能な社会を実現するために必要な技術を有している企業がたくさんあるので、産業界の皆さまにもFuture Earthに関心をもっていただき、一緒に取り組んでいきたい。

【総務本部】