Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2013年9月26日 No.3147  中国進出日系企業の労使関係と人事管理上の課題聞く -雇用委員会国際労働部会

経団連は4日、東京・大手町の経団連会館で雇用委員会国際労働部会(谷川和生部会長)を開催した。当日は、労働政策研究・研修機構の中村良二主任研究員から、同機構で昨年度から実施している中国進出日系企業を対象とした人事・労務面に関する調査・研究成果について聞くとともに、意見交換を行った。講演概要は次のとおり。

■ 「中国的」労使関係

中国の安価・大量生産発展戦略がやや低迷し、社会は以前と同様、激変し続けている一方で、日系企業の課題は以前と変わっていないようである。
中国にはわれわれの想定する労使関係は存在していない。「工会」は労働組合ではなく、党機構の末端組織である。近年の労働争議の背景としては、新世代の出稼ぎ労働者が低賃金で働くことを我慢しないといった権利意識の高まりや労働関連法の整備による労働者保護強化の動きが挙げられる。そして何より、「職場のさまざまな問題は工会が従業員をなだめ説得して、なんとか収める」という仕組みが機能しなくなってきたことが大きい。

■ 日系企業の問題

昨年の暴動にはさまざまな要因があるが、根底には「現地化」における問題がある。現地の第一線で長年働き続けてきた赴任経験者は、進出が本当に成功するか否かは「上の度量次第」という。本社の姿勢としては、「細かな点は、現地に任せるから、なんとか収益の確保を」だけでよい。現地とは、本社からの赴任者であり、ローカル・スタッフの上級管理職である。

■ 「彼なしでは現地が回らない」の功罪

生き残りのためのスリム化は必須とはいえ、あまりにも人員が不足している。任せておける人材は安心の源であると同時に、危うさでもある。常に次の人材を現地に派遣しつつ育成し、本社にも常に現地の状況が正確に判断できる人材がいる体制が望ましい。ある程度の人材コストは覚悟する必要がある。

■ 覚悟と準備を

中国では完璧な体制を整えても、争議は起こり得る。それを覚悟し、十分な研修を行ったうえで現地に派遣し、同時に、なるべく争議の可能性を低下させるしかない。定期的な意見交換会の開催をはじめ、常に従業員の要望を吸い上げる機会を設けるなど、工会以外のルートを十分に活用できるかがカギとなろう。

■ 長期的な展望も

最も根本的なことをいえば、ローカル・スタッフが本気で頑張ろうと思うインセンティブを用意することに尽きる。有能な従業員ほど、全幅の信頼を置くローカルの上級管理職がいかに処遇されるのかを凝視している。
現地化を進めれば「看板は同じでも、中身は違う会社になっていく」ことが想定される。現地のヒトと組織に最終的には何を求めるのか、まさにその判断を日系企業本社は求められている。

【国際協力本部】