Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2013年11月21日 No.3155  女性への過度な「配慮」が逆効果になることに留意が必要 -松浦ニッセイ基礎研究所主任研究員に女性活用への期待聞く/企業行動委員会女性の活躍推進部会

講演する松浦ニッセイ基礎研究所主任研究員

経団連の企業行動委員会女性の活躍推進部会(中川順子部会長)は7日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、松浦民恵ニッセイ基礎研究所主任研究員から、女性の活躍に関する政策・取り組みの変遷とこれからの課題を聞くとともに、委員間での意見交換を行った。講演の概要は次のとおり。

■ 「両立支援」と「均等」の両輪駆動が課題

1980年代後半に男女雇用機会均等法が施行され、企業はいわゆる「総合職女性」を男性と均等に育成・活用しようとしたが、出産・育児等に伴う退職が相次ぎ、女性の定着にはつながらなかった。この経験を踏まえ、2000年代前半には、両立支援制度の導入と制度利用をめぐる環境整備が図られた。

しかし、両立支援制度の利用は女性に偏り、制度の利用期間が長期化することによってキャリア形成が遅れるなど、女性が定着しても活躍できないことが新たな課題として認識されるようになっている。

現状では、家事、育児、介護等の分担が過度に女性に偏っているため、就業を継続しようとすると、両立支援制度を利用して可能な仕事量で勤務するか、家庭等を犠牲にして無理に勤務するか、という二つの選択肢しか存在しない。男性の家事、育児、介護等の分担が過小であることに、本質的な問題がある。

したがって、今後は「両立支援」と「均等」の両輪駆動が重要な課題となる。一部の企業では、両立支援制度について、利用に伴うメリット、デメリットを考慮するようアナウンスするといった対応が行われている。また、女性のキャリア支援のための講習会等に夫を同伴させ、家事分担等について意識改革を促す事例もある。

女性の育成のあり方については、管理職とのかかわり方が重要な入社初期や、出産前後において、男性の管理職が「(必要以上に)早めの退勤を促す」「(女性だからといって)叱らない」などの「残念な配慮」が存在する場合があるが、過度な「配慮」は逆効果となることに留意する必要がある。

本質的な解決策としては、多様な人材を前提とした評価制度、賃金制度等の人事管理のあり方の見直しも必要である。

■ 少しでも両立しやすい世界を

私は、生命保険会社から現在の会社に出向中の98年に第一子を出産した。両親ともに転勤職種では子育てが困難であることに加え、研究職に大きなやりがいを感じていたため、プロパーの研究者になりたいと考え、産休・育休後に1年の実績を積んでから転職を果たした。

子どもが幼い時期は、仕事と家事・育児の両立には大変苦労をしたが、そのなかで、07年に学習院大学大学院経営学研究科博士後期課程に修士号を持たず入学した。これは当時の学習院大学では前例のないことであり、両立をしながら博士号を取得しようと考えた自分に門戸を開いてもらったことに、今も感謝している。

出産後15年のキャリアを振り返ると、仕事と育児の完全な両立は無理というのが私の結論である。どちらかを犠牲にしてそのつどバランスを取るのみで、最適の着地点はない。娘たちの世代のためにも、男性が育児、家事等を分担できる世界、効率的な働き方ができる世界を、少しずつでもつくっていきたいと切に考えている。

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講演後の委員間の討議では、「女性の就業維持に向けた制度整備」をテーマとして、各社の具体的な取り組み事例や、制度運用における課題認識などについて、活発な意見交換が行われた。

【政治社会本部】