Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2013年12月19日 No.3159  提言「イノベーション創出に向けた国立大学の改革について」を公表

経団連(米倉弘昌会長)は17日、提言「イノベーション創出に向けた国立大学の改革について」を公表した。同提言は、政府の「国立大学改革プラン」の実効ある推進に向け、経団連として具体的方策を示したもの。

提言ではまず、大学改革をめぐる現状や経緯について説明。欧米やアジア諸国において大学の競争力強化に向けた取り組みが加速している一方、わが国の国立大学については、2004年に法人化されたものの大胆な改革がなされてこなかったと指摘した。

そのうえで、「国立大学改革の視点」について言及。現在の国立大学の数や規模を見直し、再編・統合を伴うかたちで、「研究重点型」「教育重点型」「地域貢献重点型」等に機能分化させることが必要と指摘するとともに、(1)競争原理の導入(2)組織力の強化(3)透明性の確保――の三つの改革の視点を明示している。具体的内容は次のとおり。

1.競争原理の導入=新たな評価指標の導入

  1. (1)財政基盤強化の方策
    競争原理を導入し、努力する大学が、財政面でもメリットを享受できる仕組みを構築することが重要である。そのためには、大学の収入構造に沿ったかたちで、(1)運営費交付金の傾斜配分強化と評価軸の精緻化(2)授業料設定の自由度向上(3)外部資金獲得のインセンティブ強化(4)競争的資金の間接経費30%の学長裁量経費への充填――の四つの施策を実施すべきである。特に、大学の基盤的経費である運営費交付金の配分方法の見直しは不可欠であり、学生や教員数に応じて機械的に配分されている現状を抜本的に見直し、「教育」「研究」「社会貢献」といった機能別の評価指標を整備したうえで、評価の高い大学に対して傾斜的に配分する仕組みを整備すべきである。

  2. (2)人事・給与制度改革
    優れた教育・研究等を行うにあたっては、国内外から優秀な教員を確保することが不可欠である。そのためには、(1)国内外から優れた教員を確保するための年俸制への移行などの給与制度の見直し(2)多様かつ厳格で差がつく評価の実施(3)多様なバックグラウンドを持つ教員の確保――といった施策を推進することが重要となる。

2.組織力の強化=ガバナンス構造の改革

企業のガバナンスを参考とした運営体制の強化や、企業など外部組織との連携強化等を通じ、「経営組織体としての大学のあり方」を見直すことが必要である。また、ビジョン・見識のある学長を選出するための学長選考方法の見直しや、学長に法的に与えられている職務権限の発揮により、「学内運営機構の集権化」を図るべきである。

さらに、教授会の法的位置づけと審議範囲の明確化等により、「学内運営機構の適切な分権化」を推進することが重要である。

3.透明性の確保=情報公開の徹底

わが国の国立大学は情報開示が不十分である。文部科学省が来年4月から本格稼働させる予定の「大学ポートレート」(注)の開示内容を充実させるとともに、大学間の比較が可能なかたちで閲覧できるようにすべきである。

(注)大学ポートレート=大学の「教育」活動の状況を発信するためのもの。米国のCollege portraitsや英国のUnistatsがモデル

※提言の全文はホームページ(http://www.keidanren.or.jp/policy/2013/112.html)参照

【産業技術本部】