Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年1月1日 No.3160  「多様な働き方と人事管理のあり方」を聞く -今野学習院大学教授から/雇用委員会

説明する今野教授

経団連は12月10日、東京・大手町の経団連会館で雇用委員会(篠田和久委員長)を開催した。当日は学習院大学経済学部経営学科の今野浩一郎教授から、多様な働き方と人事管理のあり方について講演を聞いた。今野教授の説明の概要は次のとおり。

■ 社員の多様化と伝統的人事管理の限界

女性、パート、高齢者など、働く時間、場所、仕事内容についての「制約社員」が増える一方、従来の終身雇用制度のもとで基幹社員であった「無制約社員」が相対的にマイノリティー化している。政府は、企業に対して、男女雇用機会均等法、パート労働法、高年齢者雇用安定法などの法改正に加え、ダイバーシティーやワークライフバランス施策の推進などにより働き方の柔軟化を求めている。これに対し、企業はおのおのの法改正の都度、個別的な対応を行ってきた。多様で柔軟な働き方は世界の潮流でもあり、これまでの個別的対応の積み上げは、人事管理の体系をゆがめる。社員の制約社員化が進み、働き方が多様化するなか、人事管理は多様化を前提に全体を統合して考える必要がある。

また、これまでの伝統的な人事管理のもとでは、基幹的な業務を無制約社員が、周辺的な業務を制約社員がそれぞれ担ってきた。ところが基幹社員のなかにも、仕事と介護や育児、病気等の両立に苦労する者が増えており、基幹的な業務を担う周辺社員も増えている。職域管理に基づく伝統的な人事管理のままでは、社員のモチベーションは維持できず、企業の人材活用力は低下することになる。

■ 人事管理再編の視点

今後の人事管理の基本戦略は二つある。第一は、これまでの伝統的な方法に立ち返り、人材調達や活用範囲を狭めても職域分離を明確にし、基幹社員の機動的な活用力を維持することである。第二は、社員の多様化を前提として、制約社員にも基幹業務を担わせ、人材調達や活用範囲を拡大することである。制約社員化や社員の多様化が進むなか、能力発揮を図るには、第二の戦略を選ばざるをえない。

■ これからの人事管理(評価と処遇)

  1. 1.普遍的な公平性尺度の構築・強化
    評価と処遇の最大の課題は、社内の均衡問題である。制約社員化、社員の多様化が進むほど、組み合わせは多様化し、処遇の均衡の実現は難しくなる。多様性を超えた均衡実現のための評価の仕組みの再編・強化が必要となる。制約社員の戦力化が進むほど、仕事重視型の報酬となるとの調査結果もみられることからも、仕事要素が重要な均衡基準となるだろう。

  2. 2.処遇の仕組み
    処遇決定の基本は「仕事原則」である。社員が多様化する状況に当てはめる場合、日本的事情を踏まえ、(1)無制約社員と制約社員の制約度に基づく価値の違い(2)育てて活用する長期雇用型社員の将来価値と今の能力を活用する短期雇用型社員の現在価値の違い(3)両タイプの社員の市場が評価する価値の違い――についてそれぞれ配慮する必要がある。

【労働政策本部】