Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年2月27日 No.3167  首都直下地震の被害想定と対策めぐり意見交換行う -防災に関する委員会・国民生活委員会

説明する増田氏

経団連の防災に関する委員会(橋本孝之共同委員長、柄澤康喜共同委員長)と国民生活委員会(川合正矩共同委員長、木村惠司共同委員長)は10日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、中央防災会議首都直下地震対策検討ワーキング・グループの主査を務めた増田寛也野村総合研究所顧問から、昨年末に公表された首都直下地震の被害想定と対策について説明を受け、意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

1.首都直下地震の被害の様相

今回防災対策の対象としたのは、今後30年で70%の確率で発生すると見込まれるM7.3の都区部南部を震源とする地震である。冬の夕方に風速毎秒8メートルという状況下で発生した場合、火災の同時多発等により被害は最も深刻となる。試算では、全壊・焼失家屋は最大で約61万棟、死者は最大2.3万人、被害額は約95兆円に上ると推定されている。

被災の特徴として、政府関係機関と経済中枢機能への影響も懸念される。また、首都圏の5割の地域で停電が発生し、最悪の場合は、1週間以上回復せず、回復後も、計画停電が実施されると見込まれる。加えて、通信の不安定化や鉄道の全面運転再開まで約1カ月を要する等の影響が懸念される。さらに、主要道路の道路啓開には、放置車両等のため、少なくとも1~2日を要するなど、物資輸送の遅滞も問題となる。

2.事前対策の重要性

このような被害想定ではあるが事前対策を講じれば、死者数や被害額等は確実に軽減することが可能である。

まず、建物の耐震化率を100%まで引き上げれば、全壊棟数と死者数は約9割減少するという効果が期待できる。また、感震ブレーカー等を設置し、電気出火を防止することで、焼失棟数を約5割減らすことも可能である。

次に、被害額は、電気出火の防止と初期消火の成功率を向上させることで、約30%まで減少する。これに加え、建物の耐震化率を100%とし、BCP(事業継続計画・Business Continuity Plan)の策定等を充実させることで50%以上減らすことができると想定されている。

また、都区部では一斉に物資がなくなることが予想されるため、各人・各企業には最低3日分、可能であれば1週間程度の備蓄をお願いしたい。さらに、企業としても、通勤困難な状況が発生することも視野に入れ、危機管理にかかわる人員の確保に関する対策を講じるとともに、防災関係者以外も含め、訓練を繰り返し実施していくことが必要である。

<意見交換>

経団連側からは、「600万人もの帰宅困難者にどのように対処していくべきか」「発災後通行可能な道路に関する情報の発信を一元化してほしい」等の質疑があった。これに対し増田氏からは、「発災後の交通の状況や家族の安否情報等を確実に国民へ伝達することが重要であり、例えば、ラジオやパブリック・ビューイング等の活用が必要」「交通情報については、発災後に都の対策本部が警察と道路管理者から情報を収集するが、実効性を向上させるための訓練が必要」との回答があった。

【政治社会本部】