Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年3月6日 No.3168  21世紀政策研究所が第102回シンポジウム開催 -「実効性のある少子化対策のあり方」で議論/「少子化危機突破に向けて」森少子化相が基調講演

講演する森少子化相

21世紀政策研究所(米倉弘昌会長、森田富治郎所長)は2月18日、東京・大手町の経団連会館で第102回シンポジウム「実効性のある少子化対策のあり方」を開催した。

シンポジウムでは、森まさこ・内閣府特命担当大臣(少子化対策)を迎え、同研究所がこの1年間取り組んできた研究プロジェクト「実効性のある少子化対策のあり方」の研究成果を発表するとともに、日本の未来のために少子化をどう食い止めるかをテーマに、パネルディスカッションを行った。

まず、森少子化相が、「少子化危機突破に向けて」と題して基調講演を行った。森少子化相は、出生率は近年わずかな回復がみられるが、第3次ベビーブームが生じないまま第2次ベビーブーム世代の出産適齢期が過ぎたため、出生数は今後も減少が続くとし、今後の人口構造の見通しとして、2060年には人口約8700万人、高齢化率は約40%に達すると指摘した。

そのうえで、政府は今まで「子育て支援」「働き方改革」を中心とした施策を行ってきたが、今後はそれに加え「結婚・妊娠・出産支援」に重点的に取り組み、これらを少子化対策の三本の矢として推進すべく、「日本再興戦略」の主要な一部として昨年6月に閣議決定したと述べ、政府として結婚・妊娠・出産・育児の切れ目ない支援を総合的に行うとした。

続いて、同研究プロジェクトの研究主幹である小峰隆夫・法政大学大学院政策創造研究科教授が、今回の研究目的や研究成果について報告し、(1)日本は人口問題という点で危機的状況にある(2)少子化の主因は未婚化・晩婚化であり、社会全体で結婚・出産・子育てする人にフレンドリーな経済社会を形成する必要がある(3)国・企業・個人がそれぞれ認識を改め、危機感を持って少子化対策に取り組むべき――とした。

続いて行われたパネルディスカッションでは、小峰研究主幹をモデレーターに、高尾剛正・経団連少子化対策委員会企画部会長、宮本悦子・内閣府政策統括官(共生社会政策担当)付参事官(少子化対策担当)を迎え、同研究プロジェクトの委員である安藏伸治・明治大学教授、前田正子・甲南大学教授との間で、活発な討議が行われた。

安藏委員は、少子化の人口学的分析を踏まえ、独身男女が、結婚しても共働きをしながら家族形成していくことができると感じられる環境の整備の必要性を強調した。

前田委員は、無業もしくは非正規の若者が増えていることが未婚化の大きな要因であり、そうした若者に社会で活躍するチャンスを与えることが重要であると指摘した。

高尾部会長は、産業界全体で男女問わず仕事と育児の両立が可能となる職場環境づくりに努めている状況を説明し、政府に対し多様な保育サービスの拡充を要望した。

宮本参事官は、政府の取り組みをあらためて説明のうえ、同研究プロジェクトの提言を受け、少子化の状況と対策の必要性について、今後さらに国民各層に理解を広めていくとした。

討議を通じて、国家としての強い危機感をあらためて共有し、少子化対策は国、地方、企業、個人が一丸となって取り組むべき国の最緊急課題であることが確認された。

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シンポジウムでの議論の詳細については、21世紀政策研究所新書として刊行予定である。

【21世紀政策研究所】