Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年4月17日 No.3174  「経済産業政策の現状と課題」聞く -経産省の菅原経済産業政策局長から/産業問題委員会

経団連は3月28日、東京・大手町の経団連会館で産業問題委員会(古賀信行共同委員長、下村節宏共同委員長)を開催した。経済産業省の菅原郁郎経済産業政策局長が「経済産業政策の現状と課題」をテーマに講演。その後、提言「わが国企業の競争力強化に向けて」別掲記事参照)について審議した。
講演の概要は次のとおり。

■ 政策目標をGDP重視からGNIへ

経済のグローバル化が進み、海外からの所得の純受取や交易利得が日本経済に与える影響が大きくなっている。そのため、政策目標を従来のGDPからGNI(GDP+海外からの所得の純受取+交易利得)に変えていく必要がある。現在の日本は、交易損失(20.7兆円)が海外からの所得純受取(18.6兆円)を上回る状況にあり、経常収支改善は日本経済にとって重要な課題である。

■ 経済成長の足かせ

1990年代以降、日本の経済成長率は低い水準で推移している。主たる要因は、労働投入量のマイナス寄与や、諸外国と比べTFP(全要素生産性)の寄与が比較的小さいことが挙げられる。人口減少社会を迎え、資本ストックも過剰な状態にあるなか、労働・資本投入量を大幅に増やすことは期待できず、人材活用策の見直し、設備の除却・更新や無形資産投資の拡大、産業の新陳代謝の促進、ベンチャーの創出、対内直接投資の拡大などを通じてTFPを高めることが課題である。

■ 人口減少下で求められる人材活用策

2012年12月の第二次安倍内閣発足からの約1年で、就業者数は62万人増加し完全失業率は0.6%低下した。他方、団塊世代の非正規社員への移行、女性のパート採用増加に伴い、非正規雇用者数は122万人増加しており、非正規雇用率は37.4%となっている(2013年第4四半期)。現状では、景気変動や季節変動等への対応を考慮しても非正規雇用社員数は過剰であり、短期的な変動に対応する労働者として技能実習生の増加を図るとともに、柔軟な働き方を認めることで多様な正社員への転換を図ることが重要と考えている。

■ 経常収支問題への対応

11年に日本の貿易収支は赤字に転落し、13年は11.5兆円の赤字となった。その要因は、鉱物性燃料の輸入増に加え、製造業の海外展開による現地生産の拡大と輸出構造の変化等が挙げられる。日本の経常収支は、貿易赤字を底固い所得収支で補うかたちで黒字を維持している。諸外国では、貿易赤字の拡大が経常収支の継続的な赤字につながる傾向がある。こうした経常収支問題への対策としては、法人税率の引き下げ、直接投資収益率の引き上げ、サービス産業の海外展開、女性・外国人の活用などがある。

■ 法人課税改革の視点

日本は法人実効税率のみならず、実質法人課税負担率でみても、国際的に最も高い水準にある。国際的に遜色ない水準の法人実効税率を実現し、企業の「稼ぐ力」、経済の競争力を強化することで、経済成長と財政再建の両立を目指すべきである。

【産業政策本部】