Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年5月15日 No.3176  「次世代ヘルスケア産業振興に向けた講演会」開催 -「日本の魅力を生かした新たな価値創造産業の創出に向けて」

経団連は4月16日、東京・大手町の経団連会館で経済産業省の富田健介商務情報政策局長を招き、次世代ヘルスケア産業振興に向けた講演会を開催した。富田局長は、「日本の魅力を生かした新たな価値創造産業の創出に向けて」をテーマに、ITによるイノベーション、健康長寿産業の振興、付加価値の高いサービス産業の創出、クールジャパンの推進について政府の取り組みを説明した。
講演の概要は次のとおり(健康長寿産業の振興を中心に整理)。

1.健康長寿産業振興の重要性

世界に例をみない超高齢社会を迎えたわが国では、健康づくりを担う産業の育成が求められている。背景には、健康長寿は国民からのニーズが高いだけでなく、高齢化に伴う医療費の増大を抑制することへの期待がある。

政府においても、安倍政権の成長戦略である「日本再興戦略」のなかで、健康長寿産業の振興を重点分野の一つとして位置づけており、この分野における市場・産業の創出・育成に取り組んでいる。成長戦略の取りまとめを担う産業競争力会議では、公的保険外サービス・製品の活性化と健康・予防への取り組みの促進が提起されている。健康増進、医療費の削減、新産業の創出の“一石三鳥”の実現が期待されており、具体的な施策の検討・実行の場として、次世代ヘルスケア産業協議会が発足した。

同協議会では、(1)新たなサービス・製品の創出のための事業環境の整備(2)企業や個人における健康投資の促進(3)健康関連サービス・製品の品質の「見える化」――の3点を中心に、6月の成長戦略の改訂に向けた議論が進められている。

2.事業環境の整備

健康長寿産業の振興に向けた課題の一つが事業環境の整備である。例えば、公的保険外の健康関連サービスを行う際、医師法などの医療分野の規制が適用されるのかどうか不明瞭であることが少なくない。

そこで今般、産業競争力強化法にグレーゾーン解消制度を創設することにより、法律上の判断を明確にすることにした。同時に、この制度を通じて事業実施可能と判断された事業類型については、ガイドラインとして取りまとめるなど、実施可能なケースの明確化を図っていく。具体的な事例も出始めており、先般、スポーツクラブにおける運動指導と自己採血による簡易検査が実施可能と判断されている。

3.健康投資の促進

健康投資の促進は、企業・個人の両方に利益をもたらすものであり、企業経営層が保険者と連携して取り組むことで、国民医療費の削減にもつながることが期待されている。そこで、まず経営者に従業員の健康を経営課題としてとらえてもらうため、同業他社との比較が可能なベンチマーク(評価指標)を設定し、保険者が策定するデータヘルス計画との連動を図ることとしている。

また、従業員の健康増進に努力した企業が社会的に評価され、財政的にも報われるインセンティブを整備する。例えば、保険者へのインセンティブとして、後期高齢者支援金の減算などを検討している。加えて、女性活躍推進に優れた上場企業「なでしこ銘柄」の指定を参考に、株式市場における健康経営銘柄の設定や、企業による健康経営に関する情報発信を行う枠組みの検討も視野に入れている。

4.品質の「見える化」

健康関連サービス・製品の品質を「見える化」していくため、まずは市場規模が大きい、健康運動サービスにおける品質評価の仕組みをつくり上げることから始めることとしている。具体的には、ユーザーから信頼される品質基準の枠組みを策定する。また、その枠組みを用いて、実際に品質評価を行うため、学会・業界団体・大学等の第三者が認証機関となった品質評価モデルを構築する。

【産業政策本部】