Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年5月15日 No.3176  「本格政権が機能するための政治のあり方」 -21世紀政策研究所が第107回シンポジウム開催/「選挙制度のあり方と参議院の役割」について議論を展開

21世紀政策研究所(米倉弘昌会長、森田富治郎所長)は4月23日、東京・大手町の経団連会館で第107回シンポジウム「本格政権が機能するための政治のあり方」を開催した。

同研究所では、2011年度から毎年度、政治制度に関するプロジェクトを実施しており、今回の報告が3回目となる。過去2年間の研究成果を踏まえ、今年度は、立法府改革に向けた制度面の課題解決策を探るべく、「選挙制度のあり方」と「参議院の役割」について検討を進めてきた。

■ 基調講演

シンポジウムの冒頭、衆議院議員の渡海紀三朗・自由民主党政治制度改革実行本部長が、基調講演を行った。渡海氏は、1990年代に自民党内改革派のユートピア政治研究会で当時の政治改革を実際に議論した経験を振り返りながら、小選挙区制が導入された背景と目的を説明。そのうえで現在みえてきた課題として、候補者の努力や実績よりも選挙時の「風」によって当落が決まる傾向が強くなったこと、小選挙区は原則50%以上の支持を目指すため、極端な主張はしにくく、導入当初の目的であった政策論争があまり生じていないことなどを指摘した。

さらに、現行制度の問題を抜本的に解決するには、第三者機関で議論し、その結果を各党が尊重することが必須であるとの考えを述べた。

また、参議院のあり方については、一院制にして時代の変化にスピーディーに対応すべきとし、また二院制を前提とすれば、両院の選挙制度、民意集約方法を変え、役割分担を明確に分けるべきとの見解を示した。

■ 研究報告

続いて、同研究プロジェクトの研究主幹である小林良彰・慶應義塾大学法学部教授が、今回の研究成果について報告。小林研究主幹は、日本においては地方交付税のおかげで居住形態が混合的で地域による党派性が薄く、そのため票の半分以上が死票となっていることなどを例に挙げ、小選挙区制によるウェストミンスター型の民主主義モデルは日本になじみにくいと指摘した。

そのうえで、(1)民意をより反映させること(2)区割りの恣意性を排除すること(3)投票のインセンティブを高めること――などが理想の選挙制度の基準であるとして、それらを同時に満たす「定数自動決定式選挙制度」を提唱した。

また、参議院のあり方について、その存在意義は大きいとしつつも、衆議院と役割を分け、省庁縦割りではない中長期的課題に対応する委員会制度に見直すべきとの考えを述べた。

■ パネルディスカッション

続いて行われたパネルディスカッションでは、小林研究主幹をモデレーターに、パネリストとして渡海氏、同研究プロジェクトの委員である磯崎育男・千葉大学教授、名取良太・関西大学教授、西川伸一・明治大学教授、日野愛郎・早稲田大学教授が参加した。

委員からは、小選挙区制は得票数と議席数の乖離が大きいこと、他の選挙制度と比べ相対的に投票率が低くなることなどが、統計データとともに示された。また参議院改革の方向について、「牽制・監視の府」「政策の府」「教育の府」として中長期的課題を担うべきとの意見が出された。

これらを受けて渡海氏は、日本は選挙が非常に多く、それによって国政の停滞を招いている点を指摘し、(1)制度設計においては衆参同時選挙を検討すべきである(2)参議院については、両院協議会や再議決ルールの見直しにも踏み込むべきである――との見解を示した。

今回の議論を通じて、民主政治の機能をより高度に、安定的に発揮させるための政治制度について、国民全体で不断に議論し現実政治に問いかけていくべきであることが確認された。

【21世紀政策研究所】