Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年6月26日 No.3182  第103回ILO総会へ代表団派遣 -5月28日から6月12日まで、スイス・ジュネーブで開催

ILO(国際労働機関)の第103回総会が5月28日から6月12日まで、スイス・ジュネーブのILO本部・国連欧州本部で開催され、165カ国から約4500名の参加があった。

経団連は、谷川和生・雇用委員会国際労働部会長を代表とする日本使用者代表団を派遣した。

今年の総会では、条約および勧告の適用に関する報告などの定例の議題のほか、技術議題として(1)「1930年の強制労働条約(第29号)の補完」(基準設定、1回討議)(2)「インフォーマル経済からフォーマル経済への漸進的移行の促進」(基準設定、第1次討議)(3)「戦略目標『雇用』に関わる反復的討議」(一般討議)――の三つのテーマに関する討議が行われた。

(1)「1930年の強制労働条約(第29号)の補完」については、討議を踏まえ、議定書と勧告が圧倒的多数の賛成で採択された。また、(2)の議題については来年の総会において勧告を策定することが決定された。

そのほか、「2006年の海上の労働に関する条約」について、(1)遺棄された船員の保護(2)職業上の負傷・疾病・危害を原因とする船員の長期障害または死亡時の補償のための保証金の提供――を船舶所有者に義務づける改正を承認した。

■ ライダー事務局長開会演説

演説するライダーILO事務局長(写真提供:ILO)

ガイ・ライダー事務局長は今次総会で報告書「公正な移住―ILOの政策課題の設定」を提出し、グローバル化、人口構造の変化、紛争、所得不平等に対応した政策を提示している。これを踏まえ、同氏は開会演説において、世界全体で推定2億3200万人いるといわれる移民労働者が、成長と開発に非常に大きく寄与する潜在力を秘めていることを認めつつも、移民労働者が劣悪な待遇や虐待を受けるなど許容しがたい実態にあることについて憂慮の念を示した。

■ 谷川日本使用者代表演説

代表演説を行う谷川部会長

4日には、谷川部会長が総会本会議場において、日本の使用者を代表して演説を行った。谷川部会長は、安倍政権の「アベノミクス」のこれまでの成果を紹介するとともに、企業活動の活性化が雇用の安定、雇用情勢改善に果たした役割を強調。例えば、ILOが従来から提唱している「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現」などの政策を実践していくうえで、企業活動の発展が良質な雇用を生み出すという観点をより一層強く、念頭におくべきと主張した。

なお同日、古賀伸明・連合会長、6日、佐藤茂樹・厚生労働副大臣がそれぞれ代表演説を行った。

■ ILO理事選

今年は、ILOの理事の改選期(任期3年)にあたり、総会期間中の2日、14―17年期の理事の選出が行われ、日本の労使の代表が前期(10―13年期)に引き続き正理事に選出された。なお、日本政府は常任の理事となっている。政労使がすべて正理事である国は、185加盟国のうち英米独仏日印の6カ国。

■ 仕事の世界サミット

総会議題の一環として、9日には「仕事の世界サミット」が開催され、ルクセンブルク、メキシコ、フィリピン、チュニジアの労働担当大臣に加え、労使代表なども参加して経済開発を推進するうえでの仕事の役割について討議が展開された。

会合冒頭でライダー事務局長が、5月にILOが発表した「World of Work Report(仕事の世界報告書)2014年版」の内容に言及し、2000年代初めから良質な仕事に重点的に投資した国々が07年以降、他の途上国・新興国より毎年約1ポイント高い経済成長を達成していること、社会的保護が貧困削減および脆弱な就業形態の削減を助けること等を紹介した。

同会合に使用者を代表して参加したトルコのエロル・キレセピ氏は、「持続可能な仕事のカギを握るのは持続可能な企業」として、労働者、企業双方に利益をもたらす政策を追求する必要性を強調。その一例として、エンプロイアビリティーの引き上げが生産性向上とマッチング機能を高めるために不可欠であり、技能教育訓練は企業ニーズに即したものに早急に改善すべきであると主張した。

【国際協力本部】