Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年7月24日 No.3186  平成26年度財政検証のポイントと制度改正に向けた論点〈中〉 -検証結果のポイント

経団連の社会保障委員会年金改革部会(柿木厚司部会長)は6月26日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、ニッセイ基礎研究所の中嶋邦夫主任研究員から、「平成26年度財政検証のポイントと制度改正に向けた論点」をテーマに説明を聞いた。第2回は「検証結果のポイント」。

1.結果をみるポイント

財政検証の経済前提には甘過ぎるという批判もある。しかし、厚生労働省も政府の一員であり、成長戦略をベースとせざるを得ない。成長戦略が奏功したケースでどうなるかという見方をすべきである。その際、マクロ経済スライドがいつまで続くか、その結果、給付水準がどこまで下がるかに注目すべきである。所得代替率が50%を切るか否かだけでなく、基礎年金(1階部分)と厚生年金(2階部分)それぞれの変化幅をみることが、制度改正を議論するうえで大事である。

2.主要なメッセージ

財政検証の全体をみると、成長戦略が奏功しても少子化や長寿化による給付低下はカバーできないこと、厚生年金に比べ基礎年金の大幅な低下は避けられないことがわかる。他方、成長戦略が奏功しなければ、最悪の場合、国民年金の積立金が枯渇する。将来の所得代替率50%を確保するには、成長戦略が奏功し女性の労働参加が進むこととあわせて、少子化抑制も同時達成することがポイントとなる。

3.経済や人口の影響

検証に使われた8通りの経済前提(図表1参照)のうち、成長戦略が奏功するケースA~Eはほぼ同じ結果であり、多少の経済好転でも給付削減の終了早期化には限界があることを示している。注目すべきはケースEとFである。この2ケースは、物価や賃金上昇率の前提が同じで労働参加の程度に違いがあるが、将来の給付水準に大きな差が生じている(図表2参照)。

女性などの労働参加が年金財政のカギを握ることがわかる。また、経済成長率、物価、賃金上昇率すべてが低いケースHをまれなケースととらえるか、重要なリスク情報としてとらえるかで制度改正への対応も変わろう。

人口前提も大きな影響を及ぼす。現在の東京都並みに出生率が下がる場合や、長寿化がさらに進行する場合では、ケースCやEでも給付水準が大きく低下する。経済が低迷すると出生率が低下する懸念があり、注意が必要だろう。

(図表)
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次回は「課題と選択肢」を解説する。

【経済政策本部】


平成26年度財政検証のポイントと制度改正に向けた論点

  1. 公的年金の仕組みの再確認
  2. 検証結果のポイント
  3. 課題と選択肢