Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年7月31日 No.3187  中国・ロシア・インドの宇宙政策の動向を聞く -宇宙開発利用推進委員会企画部会・宇宙利用部会

経団連は15日、東京・大手町の経団連会館で、宇宙開発利用推進委員会企画部会(中谷義昭部会長)・宇宙利用部会(西村知典部会長)合同会合を開催した。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の吉村善範調査国際部長から、中国、ロシア、インドの宇宙政策の動向について説明を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ 中国の宇宙政策

中国の宇宙開発は、「国家中長期科学技術発展規画綱要(2006-20年)」などに基づき実施されている。同綱要において、有人宇宙飛行、月面探査、地球観測システムなどが重要プロジェクトとされている。また、衛星35機による航行測位システム(北斗)の構築に取り組んでいる。

中国の主な宇宙開発推進機関としては、政府の国家航天局(CNSA)および中国科学院(CAS)、軍の中国有人宇宙プログラム室、国有企業がある。

現在、人工衛星打ち上げのため「長征ロケット」を運用しており、海外からの受注を増やしている。今後、長征ロケットの能力増強を進め、20年ごろには独自の宇宙ステーションの建設、25年以降の月有人探査および月面基地の実現などを構想している。

宇宙開発の国家予算は非公開であるが、国有企業である中国航天科技集団公司(CASC)の12年の売り上げは1.9兆円で、このうち3分の1程度が宇宙関連といわれている。

■ ロシアの宇宙政策

ロシアは昨年4月に「宇宙活動に関する2030年までおよびそれ以降の長期的な開発基本方針」をプーチン大統領が承認した。同方針では、宇宙大国の一つとして、(1)20年までに宇宙基地を完成させる(2)30年までに超重量級ロケットの打ち上げや有人月探査ミッションを実現する(3)30年以降は宇宙エレベータなどを実現する――としている。ロシアの宇宙関連予算は年約6000億円であり、宇宙開発の体制としては、ロシア連邦宇宙庁(FSA/Roskosmos)が政策を策定し、予算を配分する。ロシアは日本を含む19以上の国・機関との間で宇宙協力協定を締結している。

近年、ロケットの打ち上げの失敗が続いたことを受けて、今年3月に宇宙関連機関48機関と宇宙関連企業14社を統合した国有企業であるユナイテッド・ロケット・スペース社を設立し、体制強化を図ったところである。

■ インドの宇宙政策

インドは「第12次国家5カ年計画」(2012年4月~17年3月)に基づき、ロケット開発を含む宇宙プログラムを推進している。宇宙予算は毎年増加しており、13年度は約679億2000万ルピー(約1086億円)である。

宇宙省(DOS)の下部機関であるインド宇宙研究機関(ISRO)が中心となり、ロケットや衛星を製造している。また、宇宙省の商業部門であるアントリクス社が、宇宙関連製品などの市場を開拓している。

インドは33カ国、3多国間機関と包括協定、分野別協力協定または了解覚書(MOU)を締結しており、特にロシアとの協力実績が多い。

【産業技術本部】