Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年7月31日 No.3187  平成26年度財政検証のポイントと制度改正に向けた論点〈下〉 -課題と選択肢

経団連の社会保障委員会年金改革部会(柿木厚司部会長)は6月26日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、ニッセイ基礎研究所の中嶋邦夫主任研究員から、「平成26年度財政検証のポイントと制度改正に向けた論点」をテーマに説明を聞いた。第3回は「課題と選択肢」。

1.現在の課題

年金財政や世代間のバランスにかかわる問題として、(1)マクロ経済スライドの遅れ(発動・終了)(2)さらなる長寿化への対応(3)基礎年金(1階部分)の水準低下――がある。世代内のバランスにかかわる問題には、(1)非正規雇用者の年金・老後所得(2)高所得者の年金、年金課税のあり方――がある(図表1参照)。今回、これらの課題への解決策を検討するため、オプション試算が行われたが、選択肢が不足していると評価している。

2.考えられる選択肢

マクロ経済スライドの遅れに対して、オプション試算では、物価・賃金上昇率が低い場合でもフルで発動する場合の想定で行われたが、これ以外にも、マクロ経済スライドの余命の伸び率部分を長寿化にあわせて見直すことも考えられる。このほか、本来の年金額の改定ルールについても、マクロ経済スライドのフル発動と同じ観点から、名目・実質賃金ともマイナス時に採用される温情措置を見直すことも検討すべきである(図表2参照)。

さらなる長寿化と基礎年金水準低下への対応としては、65歳以上の就労勧奨と、国民年金の保険料拠出期間を現状の40年から5年延長した場合が示された。長寿化対応としては、支給開始年齢の引き上げも考えられるが、世代別の影響を明らかにするとともに、目的を明確化し、他の手法との比較検討が求められる。基礎年金水準低下対策でほかに考えられる方法としては、国民年金と厚生年金の財政統合、低所得者への別途の加算がある。

非正規雇用者の年金に対しては、オプション試算に被用者保険の適用拡大が盛り込まれた。極端な例として示された拡大規模が1200万人のケースでは給付削減終了が早期化したが、220万人のケースでは年金財政への影響がほとんどなかった。適用拡大に関しては、1号や3号被保険者数の動向、各医療保険者財政への影響を中心に議論を深めることが求められる。

いずれにせよ公的年金の給付削減は不可避であり、何らかの自助努力が必要である。その方向性としては、就労継続の促進と、私的年金の拡充の推進ではないかと考える。

(図表)
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【経済政策本部】


平成26年度財政検証のポイントと制度改正に向けた論点

  1. 公的年金の仕組みの再確認
  2. 検証結果のポイント
  3. 課題と選択肢