Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年8月7日 No.3188  21世紀政策研究所が中部地域セミナーを開催 -「エネルギー政策の課題と産業への影響」

21世紀政策研究所(榊原定征会長、三浦惺所長)は7月18日、名古屋市内で、「エネルギー政策の課題と産業への影響」と題しセミナーを開催した。

エネルギー・ミックスの策定や電力システム改革が重要な政策課題となるなか、同研究所ではこれまで、澤昭裕研究主幹と竹内純子研究副主幹が中心となって、エネルギー問題に関する検討を行ってきた。セミナーには、三浦所長を座長として、中部地域の会員企業代表者、幹部88名が出席し、澤、竹内両氏から同研究所の研究成果について説明を受けるとともに、エネルギー政策に関する産業界としての対応を討議した。

■ 講演1「誤解だらけの電力問題」

竹内氏

セミナーではまず、竹内氏が講演を行い、エネルギー政策に関しては3E+S(経済性、安定供給・安全保障、環境、安全性)の各要素にバランスよく目を配る必要があるとの見解を示した。

そのうえで、電力自由化や脱原発・再生可能エネルギー導入促進の成功例といわれているドイツの実情を紹介。ドイツでは、(1)電力自由化による電気料金低下の効果は確認できていない(2)脱原発は2022年を期限としたもので、約半数の原子力発電所は現在も稼働している(3)再生可能エネルギーの導入量は急速に拡大したが、全量固定価格買取制度の賦課金が膨らみ、一般家庭の負担額はすでに年間約3万円に上る――と指摘した。

また再生可能エネルギーの不安定性を吸収するためには、さらなる送電網整備や既存火力発電所の維持が必要になるが、(1)コスト増大の懸念や自由化市場にある火力発電所の閉鎖が続き安定供給に懸念が持たれている(2)老朽化した褐炭火力発電所稼働の増加によりCO2排出量が増加している――等の状況を報告。ドイツの現実に学び、国民生活への影響や温暖化問題、自由化と原子力事業の継続性の齟齬の問題などを総合的に勘案しつつ、早急にわが国のエネルギー政策を検討しなおす必要があるとの結論を示した。

■ 講演2「原子力事業環境・体制整備に向けて」

澤氏

次に、澤氏が講演を行い、仮に原子力発電事業を維持するのであれば、その必要性を政治的に確認する必要があるとの見解を示した。また電力自由化との関係について、完全な市場原理のもとでは淘汰されてしまう設備もあり、それらへの投資に配慮したファイナンス体制を整備しなければならないと指摘した。

さらに、原子力規制委員会の規制活動については、ゼロリスク論にとらわれ外部とのコミュニケーションに消極的な態度を取ることで明確な審査基準を示せなくなり混乱しているとして、審査の手続き等を改革すべきとした。

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なお、セミナー開催に先立ち開催した昼食懇談会では、澤氏からエネルギー政策に関して今後予想される動向が紹介されたのを受け、会員企業から率直な意見が出され、活発な議論がなされた。

セミナーの詳細については、21世紀政策研究所新書として刊行予定である。

【21世紀政策研究所】