Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年10月16日 No.3196  「わが国食料安全保障のあり方」テーマに開催 -経済外交委員会企画部会

経団連の経済外交委員会(大林剛郎共同委員長、中野和久共同委員長)では、わが国の経済外交のあり方について検討を進めている。今般、これまでの政府や有識者からのヒアリングを踏まえ、提言取りまとめに向けた作業を進めるため、同委員会の下に企画部会(清水祥之部会長)を新設した。今後同部会では、食料安全保障、インテリジェンス、パブリック・ディプロマシー等について専門家からヒアリングを行うとともに、会員企業へのアンケートを実施したうえで、提言の検討を行う予定である。また、並行して経済外交に関連するテーマでのフォーラムの開催、関係国への政策対話ミッションの派遣等を行い、民間経済外交を推進していく。

同部会は活動の皮切りとして1日、東京・大手町の経団連会館で第1回会合を開催し、柴田明夫資源・食糧問題研究所代表を迎え、わが国食料安全保障のあり方について説明を聞いた。柴田氏の説明概要は次のとおり。

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資源・エネルギー・食料の安全保障とは、国民生活、経済・社会活動、国防等に必要な量を受容可能な価格で確保できるということである。特に、食料安全保障については、「食糧問題」と「農業問題」の関係を整理して把握することが必要である。

まず、「食糧問題」であるが、世界の穀物市場は、今世紀に入って、市場規模・価格水準とも新たなステージに入り、穀物価格の変動リスクが拡大している。特に2000年以降、穀物価格の均衡点が大幅に上昇している。この変化に対応し、世界的な農業開発ブームが起き、農業の世界的な工業化・商品化・装置化・生物工学化等による供給力拡大が進んでいる。

需要面では、中国の大豆・トウモロコシの輸入、中東・北アフリカ地域の小麦・トウモロコシ・コメの輸入が今後とも拡大する。世界の食糧市場規模は、340兆円(09年)から680兆円(20年)に倍増し、中国・インドを含むアジア市場は80兆円から230兆円へ約3倍になると予想される。また、農業は自然の領域にかかわることから、地球温暖化、水不足、多様性の喪失など、気になる兆候も顕在化している。

このような状況を背景に、日本がこれまで輸入食料に追求してきた、「安い価格」「安全な品質」「安定した供給」の「三つの安定」は脅かされつつある。従来の食料安全保障戦略上の不測の事態への対応を見直し、国内で良質の食糧を安定的に供給できるような体制をつくる「農業問題」への対応が重要となる。

そのためには、国内の農業資源のフル活用を中心に、穀物備蓄の拡大、輸入先多角化で対応することが必要だ。また、アジア共通の農業政策の提唱、農産物・食品の安全・安心・衛生問題に関連した認証基準の整備、効率的流通・輸送システムの整備支援、農業開発協力など、農業生産を軸とした海外との協力体制を構築することが、日本の食料安全保障にとって有効である。

【国際経済本部】