Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年11月20日 No.3201  「今後の少子化対策への要望」を公表 -少子化対策の財源規模や使途などの課題を提起/企業も雇用環境整備に向けた取り組み推進を

政府は50年後も1億人程度の人口規模を維持するとしており、年内を目途に人口減少克服・地方創生に向けた「長期ビジョン」と「総合戦略」、年度末までに少子化社会対策基本法に基づく「少子化社会対策大綱」の取りまとめを予定している。

そこで経団連(榊原定征会長)は18日、実効ある少子化対策の実現に向けて「今後の少子化対策への要望」を公表した。ポイントは次のとおり。

■ 少子化の現状と課題

高齢者関係給付と児童・家庭関係給付の推移

わが国では、1990年代初頭以降、さまざまな少子化対策が講じられてきたが、出生率・出生数の減少傾向に本格的な反転はみられていない。

要望書では、その背景として、(1)少子化対策の重要性について国民的理解が不十分であったこと(2)継続的かつ効果のある財源規模で少子化対策が実現してこなかったこと(3)高等教育等に対する公的支援が不十分であるなど若者支援が手薄であったこと(4)多様な地域性への配慮が十分ではなく待機児童解消等の子育て支援が施策の中心であったこと――を挙げた。

とりわけ(2)の財源規模については、要望書では、(1)高齢者向けの給付は急激に伸びてきた一方、少子化対策を含む児童・家族向けの給付は微増にとどまっている(図表参照)(2)財源の使い方についても、保育サービスなどの現物給付よりも、児童手当のような現金給付に偏っており、少子化対策に成功したスウェーデンやフランスなどとは対照的である――といった点について問題指摘した。

■ 具体的な施策のあり方

現状の課題を踏まえ、今後求められる具体的な施策としては、(1)過度に高齢者を優遇している歳出の見直しによる財源の捻出(2)株式会社の参入促進等を通じた子育てサービスの拡充(3)保育人材の確保や配置要件の緩和(4)若者の自立に向けた教育・職業訓練の充実(5)経済的に恵まれない子どもたちを支援する社会的包摂に向けた取り組み(6)地方における雇用機会の創出と人口減少を前提としたまちづくり――を掲げた。

また、少子化対策の財源確保のために企業負担の拡大を求める意見に対しては、社会インフラともいうべき子育て環境の整備は税財源で実施するのが基本だと主張している。

■ 企業が果たすべき役割

少子化は社会全体の課題であるため、企業としても取り組みを進めていく必要がある。要望書では、(1)キャリア形成支援を行いつつ、男女ともに育児休業の取得促進を図り、20代半ばでも妊娠・出産・育児がしやすい環境を整備する(2)非正規労働者に対する転換制度の活用など、多様な雇用機会を提供する(3)従来の子育て世帯向けサービスを充実させるとともに、フランスで導入されている多子世帯証明の「大家族カード」が日本でも導入された場合には多子世帯を優遇した財やサービスの開発が期待される――といったことを掲げた。

※全文は http://www.keidanren.or.jp/policy/2014/092.html 参照

【経済政策本部】