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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年11月20日 No.3201 人口減少下における外国人労働力活用について説明を聞く -明治大学の加藤教授から/経済政策委員会企画部会

経団連の経済政策委員会企画部会(橋本法知部会長)は6日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、明治大学政治経済学部の加藤久和教授から、「人口減少下における外国人労働力の活用」をテーマに説明を聞いた。概要は次のとおり。

1.人口減少の動向と外国人労働力の必要性

日本の人口はすでに減少段階に入っている。出生率が1.35前後で推移した場合、2060年には日本の人口は8600万人、すなわち現在の3分の2程度の規模まで縮小する。同時に高齢化も進行するので、労働力人口に及ぼすインパクトはさらに大きい。労働政策研究・研修機構が今年行った推計によれば、経済成長と女性・高齢者の労働参加が適切に進んだ場合でも、30年にかけ、労働力人口は300万人減少する。この300万人の補填を行おうとすれば、外国人労働力の活用を検討せざるを得ない。

また、OECDのデータによれば、高齢化の進行は技術革新にマイナスの影響を及ぼす。高齢化が急速に進行する日本において、優れたイノベーションを創出し続けるには、イノベーティブな外国人労働者と協働することが極めて有用である。

2.外国人労働力をめぐる現状

日本における外国人人口は13年時点で約206万人と、総人口の1.62%を占めるにすぎない。海外生まれの人口の割合は、OECD加盟国のなかでも下から3番目という低水準にとどまる。

日本政府の外国人労働者に対する姿勢は、1967年の「第一次雇用対策基本計画」で方向づけられた。当時も労働力不足が顕在化していたが、政府は外国人労働者を受け入れないことを表明した。その後、高度人材に限って受け入れを認める方向に転換していく。09年には、高度人材の受け入れを進めるため「高度人材ポイント制」が導入された。同制度は、学歴・職歴・年収等いくつかの評価項目ごとにポイントを設け、一定点数に達した場合、在留期間など出入国管理上の優遇措置を講じる仕組みである。しかし、認定を受けた者の数は13年4月時点で434人とその規模は小さい。

アメリカやイギリス、ドイツといった国々における外国人労働力対策では、単純労働者の受け入れは厳しく制限する一方、ポイント制などを通じて高度人材を受け入れている傾向が認められる。

労働力人口の減少は、今後世界各国が直面する課題であり、高度人材の引き抜き合戦は過熱していくであろう。ただ待っていても高度人材は来てくれない。アジア地域でも高齢化が進むため、同地域から漫然と受け入れることも困難となる。高校や大学での留学生受け入れを増やし、そのまま定着してもらえるようにすることが有用である。

3.政策的議論

移民受け入れにあたっては、考えねばならない課題が存在する。

一つは社会的問題である。移民はクローズドなコミュニティーをつくってしまいがちなので、いかに社会的統合を図るかを考えておかなければならない。特に宗教をめぐる問題は検討が欠かせない。

また、財政負担にも目を向ける必要がある。税・社会保障の担い手が増える一方、医療・介護のほか、場合によっては生活保護の負担が増大する可能性があることにも注意が必要である。

【経済政策本部】

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