Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年11月20日 No.3201  21世紀政策研究所が第111回シンポジウム開催 -「森林大国日本の活路」/木を知り、木を使い、木を活かし、森と生きる

21世紀政策研究所(榊原定征会長、三浦惺所長)は10月30日、同研究所が取り組む研究プロジェクト「森林・林業・木材活用」の研究成果を踏まえ、東京・大手町の経団連会館で第111回シンポジウム「森林大国日本の活路」を開催した。概要は次のとおり。

■ 基調講演

冒頭、中川郁子・農林水産大臣政務官が基調講演を行い、子どもたちが木の温もりに触れて育つ環境を提供することや、身近な生活での「木づかい」により木材利用を増やすことの重要性を訴えた。

次に、藤原忠彦・長野県川上村村長が、村の公共施設(林業総合センター、文化センター、中学校など)やバスの停留場などにもすべて地元産のカラマツを使うなどの取り組みを紹介し、地域資源に自ら付加価値をつくり出していくことが非常に大切であると強調した。

■ 研究報告「森林大国日本の活路」

同研究プロジェクトの研究主幹である安藤直人・東京大学大学院特任教授が研究報告を行い、(1)日本では戦後植えられたたくさんの木が育ち、森林の成長量が需要を上回っている(2)林業は50年、100年先を考えて木を植えていかねばならない(3)林業は木材・住宅・紙などすそ野の広い重要な産業である(4)木造建築学を大学で積極的に教えてこなかったために木造建築の設計者が少ない――など、まず日本の木をめぐる実情を知ることが大切であると訴えた。

また、2020年の東京五輪の施設に木材を使う意義を国際的に考えること、そして木材の使用に不可欠な国際的な森林認証を日本でも取得することが必要と指摘した。

■ 事例報告「飯盛研究室の取り組み事例」

同研究プロジェクトの委員である飯盛義徳・慶應義塾大学教授の研究室の学生が、学生自身がファシリテーターとなって、三重県尾鷲市での「笑顔食堂」など、山村地域の活性化に取り組んでいる事例を紹介した。

■ パネルディスカッション

パネルディスカッションでは、安藤研究主幹をモデレーターに、森田富治郎・第一生命保険特別顧問(21世紀政策研究所前所長)、榎本長治・山長商店社長、渕上和之・林野庁経営企画課長、同研究プロジェクトの委員である加藤哲・国際航業執行役員、藤原村長の間で活発な討議が行われた。

パネリストからは、(1)川上の林業から川下の消費者まで一貫したサイクルでとらえた林業再生が必要である(2)川下の消費者の思いが川上のやりがいにもつながる仕組みづくりが大切である(3)無垢の木をうまく使って建築空間のなかで日本の木の美しさを活かすべきである(4)地元の木材資源を活かせる人づくりと山村づくりのために、全国1700の市町村には1700のモデルがあってよい――などの考えが提起された。

シンポジウムの詳細は、21世紀政策研究所新書として刊行予定である。

【21世紀政策研究所】