Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年12月4日 No.3203  少子化克服に向けた全国知事会・都道府県の取り組みを聞く -女性の活躍推進委員会

左から鈴木三重県知事、平井鳥取県知事、尾﨑高知県知事

経団連は11月6日、東京・大手町の経団連会館で女性の活躍推進委員会(前田新造共同委員長、伊藤一郎共同委員長)を開催し、尾﨑正直高知県知事、平井伸治鳥取県知事、鈴木英敬三重県知事から、全国知事会や都道府県の取り組みを聞き、意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ 尾﨑高知県知事

全国知事会は少子化問題に大きな危機感を持っており、7月に「少子化非常事態」を宣言し、少子化対策の抜本強化に向けた提言を取りまとめたところである。

結婚を希望するすべての人の望みをかなえ、今より5歳早く子どもを産める社会にしていくなど思いきった対策に取り組まなければ、合計特殊出生率を2.0以上に回復することは困難であり、ライフステージに応じた施策の展開とともに、待機児童対策や結婚支援など、地域の実情に合った施策の推進が必要。さらに、出生率の高い地方に若者が残れる施策に加え、経済的な負担感から結婚・子育てを躊躇する若者を後押しする「高齢者から若い世代への資産移転を促す税制の創設」等、世代間の支え合いの仕組みが求められる。

高知県では1990年に人口が自然減に陥り、経済規模の縮小、若者の県外流出、過疎化が進行するなか、地産外商や移住促進、大学の充実、中山間地域対策などの総合的な仕組みのうえに少子化対策を進めている。資源の豊富な中山間地域に、シェアオフィスや加工品製造などの機能を持つ「小さな拠点」をつくることで、地域に若者が残ることができ、少子化問題の根治対策になると考えている。

■ 平井鳥取県知事

昨年から子育て支援施策に意欲的な県知事の有志11人で「子育て同盟」を結成している。主な目的は他県の先進的な施策をまねながら、各県が施策をつくり、できることから実行していくことにある。

鳥取県では2010年に「子育て王国とっとり」を宣言し、市町村と協力しながら、不妊治療費の助成の拡大や多子世帯に対する保育料軽減の充実などの子育て支援を展開してきた。その結果、合計特殊出生率が08年に1.43で全国第17位だったものが、13年には1.62まで回復し、順位も全国第7位に上がり、やれば結果は出ると実感している。中山間地域に住む人が増えれば、出生率は上がる。中山間地域の保育料の無料化や園舎を持たない「森のようちえん」の取り組みは、移住・定住促進に効果が出ている。いろいろなアイデアがあるので、ぜひ企業にも取り組んでほしい。

■ 鈴木三重県知事

私は内閣府の「少子化危機突破タスクフォース」の有識者委員として、知事としての意見を発信してきた。

タスクフォースの果たした役割としては、それまで子育て支援に偏っていた少子化対策を、結婚、妊娠・出産、子育て、働き方等ライフステージ全般に対策が必要であると政府の取り組みに盛り込むことができたことである。さらに、13年度の補正予算において、約30億円の「地域少子化対策強化交付金」という各地域の実情に応じた少子化対策のための交付金が設けられたことは画期的であった。そのほか、対GDP比で1%程度の家族関係社会支出を、まずは2%にまで引き上げる必要があることも提言している。

事業主の立場では、三重県庁は男性の育児休業取得率が約13%(13年度)であり、全国の事業者平均2%を大きく超えている。(1)知事自身の育休取得(2)全管理職への男性の育児休業取得率10%の目標化(3)現場で使えるツール(育児参画シート)の作成(4)「育ボス」を評価する仕組み――の4点がその要因であると考えている。

<意見交換>

出席者からの「企業は地方の少子化に対して、どのように貢献できるか」との質問に対し、尾﨑知事は「本社の地方移転は困難な面もあるが、中山間地域でのシェアオフィスや社員研修など地方にはさまざまな受け皿があり、マッチングの機会を設けるなど応援をお願いしたい」と答えた。平井知事は「本社機能の一部を地方に移し、会社全体の出生率が上がったという例もある。検討してもらえれば受け皿はつくることができる」と回答。鈴木知事は「大学生は本社で一括採用されることが多いので、事業所単位での採用を一定程度行い、地域の若者が地域で働く場をつくってほしい」と述べた。

【経済政策本部・政治社会本部】