Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2015年2月19日 No.3212  OECDと国際課税に関する会議開催 -BEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトへの協力強化で一致

講演するサンタマン氏

経団連および21世紀政策研究所(三浦惺所長)は3日、東京・大手町の経団連会館でOECDと国際課税に関する会議を開催した。OECDでは現在、経済のグローバル化に対応した新たな国際課税制度を構築するため、G20諸国も含めたBEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトを推進している。こうしたなか、昨年OECDから経団連に対し、今後国際課税に関する会議を定期的に開催したいとの提案があった。今回はその第1回会合との位置づけである。

会議には経団連の佐々木則夫副会長、21世紀政策研究所の青山慶二研究主幹(早稲田大学大学院教授)、パスカル・サンタマンOECD租税政策・税務行政センター局長、浅川雅嗣OECD租税委員会議長(財務省国際局長)、田中琢二財務省主税局参事官が登壇、会員企業ら約180名が参加した。

佐々木副会長は開会あいさつのなかで、BEPSプロジェクトを支持する意向を示しつつ、その具体的な議論においては「税務行政の向上と納税者の負担のバランス」「先進国と途上国のバランス」に留意する必要があると指摘。今後も経団連として積極的、建設的にプロジェクトに関与していくと述べた。

会議では、サンタマン局長による基調講演に加え、三つのパネル討議を実施。PE(恒久的施設)への課税問題、租税条約の濫用防止、無形資産や利益分割法などの移転価格税制、国別報告などの文書化、紛争解決などについて取り上げた。

閉会においてサンタマン局長からは、「日本の経済界にとってのBEPSプロジェクトの意義は、企業間の競争条件の均衡化である。日本企業はコンプライアンス意識が高く、他国とは利害が異なる。多様な意見をうかがうことが重要であり、今回の会議は大変有用だった。来年もぜひ開催したい」との発言があった。

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なお、会議で取り上げた議題のうち国別報告については、今後多国籍企業に対し国別の総収入金額、税引前利益、法人税額等の情報の記載を求めるもので、昨年9月にOECDから標準書式が公表されていたが、作成が義務づけられる多国籍企業の範囲、開始時期、提出・(各国税務局間での)共有方法については積み残しの課題となっていた。特に三つ目の論点については機密情報保護の観点から、経団連としても重大な関心を有していたところであり、会議でも白熱した議論が行われた。

この問題については、会議終了後の同月6日にOECDがガイダンスを公表した。これによれば、国別報告は、年間の連結ベースの売上高が7.5億ユーロ以上(約1000億円)の法人が、2016年1月1日以後開始事業年度の分から作成することとなる。国別報告の提出は事業年度終了後1年間、提出が猶予されることから、例えば3月決算法人については最初の提出は18年となる。

また、最大の懸案事項であった国別報告の提出・共有方法については、多国籍企業の究極の親会社が、その本店所在地国の税務当局に提出、租税条約のネットワークにより、その多国籍企業が事業を行う諸外国の税務当局に連携される「条約方式」が第1ルールとして採用され、経団連の意向が反映された。国内では、早ければ平成28年度税制改正で取り上げられることになる。

経団連は今後もOECDのビジネス諮問機関であるBIAC、また、財務省、国税庁、経済産業省とも連携しながら、BEPSプロジェクトに対応していく。

【経済基盤本部】