Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2015年3月12日 No.3215  中南米地域大使との懇談会開催 -同地域との経済関係の強化をめぐり意見交換

経団連は2月25日、東京・大手町の経団連会館で中南米地域22名の大使と高瀬寧外務省中南米局長を招き、同地域との経済関係の強化をめぐって意見交換を行った。

冒頭、座長の小島順彦副会長から、大詰めを迎えているTPP(環太平洋経済連携協定)交渉を成功裡に導くうえでカギを握る太平洋同盟(注1)との連携強化やコロンビアとの経済連携協定の早期締結への期待を表明した。また、昨年の安倍首相の中南米訪問の成果のフォローアップの一環としてブラジルとの経済連携協定の可能性について経団連とブラジル全国工業連盟との間で共同研究を実施していると述べた。これに対して高瀬局長は、昨年の安倍首相の中南米訪問に榊原会長はじめ経団連幹部の同行により日本のプレゼンスを示すことができたと謝意を示したうえで、中南米は6億人の人口と6兆ドルの市場を擁し、180万人の日系人ネットワークを活用できるなど潜在性は高いと指摘。安倍首相が示した「発展を共に」「主導力を共に」「啓発を共に」を理念に、同地域との連携を強化したいと述べた。

主な大使の発言概要は次のとおり。

梅田邦夫ブラジル大使

ジルマ・ルセフ大統領が再選を果たし、持続的成長の回復に向け、財政再建を2期目の最優先課題に挙げている。電気・ガソリンに対する補助金の削減など痛みを伴うが、経済界は支持している。今後、日本やEU等とのEPA(経済連携協定)などメルコスール(注2)にとらわれない貿易投資政策を採用する可能性がある。

山田彰メキシコ大使

安定した民主的政治と開放的市場経済が定着しており、進出日本企業も5年で倍増した。人材育成、技術移転、雇用創出の観点から、日本企業に対する期待は高い。エネルギー改革により同分野が外資に開放され、ビジネスチャンスが拡大している。日本企業にはチャンスを取りこぼすことのないよう期待する。

渡部和男コロンビア大使

サントス大統領が再選を果たし、左翼ゲリラとの和平達成、高コスト構造の改善による競争力強化等を2期目の最優先課題に挙げている。日本は、太平洋同盟諸国のうち唯一コロンビアとEPAを締結しておらず、交渉の早期妥結が課題。

二階尚人チリ大使

従来の鉱物資源に加え、広域道路網、空港、防災等のインフラ分野にビジネスチャンスが拡大している。バチェレ政権は、隣国のアルゼンチンをはじめとするメルコスール諸国との連携を重視しているが、太平洋同盟をベースに自由貿易を堅持するという基本方針に変わりはない。

林哲三郎ベネズエラ大使

原油価格の下落で財政が厳しい状況にある。マドゥーロ政権の支持率は急速に低下し、国民の不満が高まっているが、野党への支持率もあまり高くない。今年の国会議員選挙は与党に厳しいものになるだろうが予測は難しい。

佐藤博史キューバ大使

米国議会で対キューバ制裁解除に反対の立場の共和党が多数を占めているため、米国による制裁解除にはまだまだ時間がかかるのではないか。開発ニーズが山積しており、無償資金協力を活用して民間投資の呼び水としていきたい。

(注1)太平洋同盟=メキシコ、コロンビア、ペルー、チリが加盟する。加盟国間の経済的統合ならびに、アジア太平洋地域との政治経済関係の強化を目標としている

(注2)メルコスール=アルゼンチン、ボリビア、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ、ベネズエラが加盟する南米南部共同市場。域内関税の原則撤廃や対外共通関税の設定等に取り組む


【国際協力本部】