Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2015年3月12日 No.3215  東京工業高等専門学校を視察 -実践的・創造的トップエンジニアの育成を目指す/教育問題委員会企画部会

あいさつする古屋東京
工業高等専門学校校長

経団連の教育問題委員会企画部会(三宅龍哉部会長)は1月28日、東京都八王子市の国立高等専門学校機構・東京工業高等専門学校(以下、東京高専)を訪問した。機械工作技術を実践的に学習するものづくり教育センターでの授業を見学したほか、「KOSEN発“イノベーティブ・ジャパン”プロジェクト」(注)の取り組みや今後の高専教育の課題等について古屋一仁校長らと懇談した。

■ 課題解決型学習を取り入れた授業展開

東京高専では、本科5年(または本科・専攻科7年)の一貫教育により、一般教育および工学系の専門教育を行い、実践的技術や専門的知識を備えたトップエンジニアの育成に取り組んでいる。1年次は、ものづくり工学の基礎全般を修得するために共通教育コースを全員が履修し、積極的な学びの姿勢を育みながら自身の方向性や適性をじっくり見極める。各学科に分かれて専門分野を学ぶのは2年次からとなる。

ものづくり教育センターでは、学生5人が一組となって、ばらばらの部品状態からオートバイを組み立てる作業を行っていた。この授業では、課題に向けてチームで話し合うこと、そこからの学びやものづくりの基礎を体感しながら思考に刺激を与えることを目的としている。また、「倫理思想」の授業では、学生らが輪になって座り、「製造物責任」について自身が知っている事例を挙げながら、解決に焦点を当てた積極的な意見交換を行うことで知識を深めるアクティブラーニング型の学習スタイルが導入されていた。

■ 社会とつながり「イノベーション」を実現するエンジニアの育成に向けて

ものづくり教育センターで5人一組
でオートバイを組み立てる学生たち

また、「イノベーション(社会変革)」を実現する可能性を持ったエンジニアの育成に向けて、新たに「社会実装教育の実践」にも取り組んでいる。これは、2012年から始まった「KOSEN発“イノベーティブ・ジャパン”プロジェクト」の中心的プログラムであり、学生に実際に製品を使うユーザーとの対話から現実の社会的課題の工学的解決法を生み出させることが目的。当日は地域の老人クラブの方から、学生がロボットの試作品についての評価・意見を聞き、改良・改善点を検討していた。

<意見交換>

視察後の懇談で、経団連側から「難易度の高い課題に対し、結果を出せない学生をどう評価するのか」と質問したのに対し、同プログラムの推進責任者である浅野敬一教授は、「何かを開発することよりも目的はあくまでも教育。社会の現実課題に取り組むことで学生に積極的な学習習慣が身につくことが重要であり、結果を出せなくてもその過程を評価している」と説明した。

また、工学系女子学生がもっと増えることを期待しているとの経団連側の発言に対し、古屋校長からは「東京高専の女子学生比率は現在10%だが、5年間で20%近くまで増やしていきたい。社会実装コンテストへの参加も半分が女子学生である。社会的な期待の高まりもあり、理系好きの女子中学生に高専の魅力を伝えていきたい」と語った。

(注)KOSEN発“イノベーティブ・ジャパン”プロジェクト=文部科学省が実施する大学間連携共同教育推進事業で採択。体験型の教育プログラムとして体系化し、17年までのカリキュラム作成を目指している

【社会広報本部】