Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2015年3月26日 No.3217  地球温暖化問題を技術で解決する~産業界の取り組み<12> -省エネ・低炭素のビルやマンションの開発・提供に貢献する不動産業

不動産業界は、マンションや戸建住宅の開発・分譲、オフィスビルや商業施設等の開発・賃貸・運営のほか、都市再開発事業や不動産仲介事業等を行っており、業務・家庭部門のエネルギー消費・CO2排出に大きくかかわる産業である。そのため、不動産協会では、1997年度に環境自主行動計画を策定し、地球温暖化対策等に主体的に取り組んできた。2013年3月には2020年に向けた「不動産業環境実行計画」(低炭素社会実行計画を含む)を策定し、今般、2030年を目標とする低炭素社会実行計画フェーズⅡに対応した。

不動産業の環境対策は、主体的に取り組むとともに、多様な関係者と連携しており、取り組む範囲が広いのが特徴である(図表1および(2)(3)(4)参照)。

図表1 不動産業における各事業段階と発生する環境影響・負荷

(1)国内の企業活動における目標

会員企業が自主的・主体的に取り組むべき範囲の数値目標としては次のとおりである。

  1. 1)自らの業務で使用するビル(本社機能が所在するビル)のエネルギー消費原単位を改善し、2020年度は2005年度比マイナス25%、2030年度はマイナス30%とする。なお、賃貸オフィスビルは2)(2)で対応。
  2. 2)新築オフィスビルの設計性能については、PAL(年間熱負荷係数)低減率10%以上、ERR(注)15%以上(大型ビルは25%以上)とする。なお、ERRの目標は2013年に5ポイント強化している。
  3. 3)新築分譲マンションの設計性能は、「CASBEE(建築環境総合性能評価システム)―新築」における「運用段階」の環境性能が参考値より5%以上高いレベルとする。

2)は2008年から、3)は2009年から目標値を定め、省エネ・低炭素に優れたビルやマンションの開発・提供に成果を上げてきた(図表2、図表3参照)。現在、省エネ法(平成25年基準)の指標を用いた新目標を検討中である。

(注)ERR=設備(空調・換気・照明・給湯・昇降機)の省エネ性能を基準値からの削減率で示した指標。大きいほど性能が高い


図表2 オフィスビルのERRの目標値、実績値(平均と分布)、目標達成率

図表3 マンションの標準仕様における最高等級等の割合

(2)主体間連携の強化

不動産業に関連する多様な関係者との連携も重要であり、賃貸オフィスビルについては、当協会が企画・設計・開発段階((1)2)参照)、日本ビルヂング協会連合会が運用段階(共用部分のエネルギー消費原単位を2020年度までに2009年度比マイナス15%、2030年度までにマイナス20%とする目標を掲げている)と役割分担し連携することにより、取り組みの実効性を高めている。加えて、日本建設業連合会(建設施工段階のCO2削減目標や建築物の低炭素化を掲げる)、マンション管理業協会、エネルギー事業者、大学研究機関等とも連携するとともに、ビルや住宅のエネルギー消費量の見える化などにも取り組んでいる。さらに、環境性能の高い不動産が、テナント、購入者、投資家、金融機関など多様な市場参加者から正当な評価を得られるよう、不動産環境価値評価を活用・普及し、環境と経済の両立に努めている。

(3)国際貢献の推進

日本の強みである高い環境技術、都市再生やまちづくりのノウハウを海外の都市開発で活かし、CO2排出量が今後増加すると予想される中国等のアジア地域をはじめとした、海外での環境共生都市の展開に貢献する。

(4)革新的技術の開発

先進技術(例えばデシカント空調、輻射空調、知的照明システム等多種多様な技術)の導入事例の共有化を図るとともに、助成制度等を活用し導入を推進する。ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)、スマートシティ等をはじめとした革新的技術の調査研究を行い、メーカー等と連携して導入・普及に努める。

また、面的開発を行う際には、個別の建物における技術だけでなく、地域冷暖房やエネルギー融通、再生・未利用エネルギーの活用、AEMS(エリアエネルギーマネジメントシステム)の導入などを検討し、スマートシティの推進に努める。

(不動産協会)
【環境本部】

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