Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2015年4月16日 No.3220  「新たなエネルギーミックスの策定に向けて」公表 -経済性ある価格でのエネルギー安定供給の実現のために

エネルギー政策は重要な国家戦略であるだけでなく、気候変動問題への対応策としても大きな意味を持つ。そこで、経団連は6日に提言「新たなエネルギーミックスの策定に向けて」を取りまとめ、公表した。概要は次のとおり。

■ 基本的な視点

新たなエネルギーミックスは、安全性の確保を大前提に、エネルギーの安定供給、経済性、環境適合性(S+3E)の適切なバランスが取れたものとすべきである。とりわけ、経済性ある価格でのエネルギー安定供給の実現が重要である。

東日本大震災後、産業用の電力料金が約3割上昇し、経済や企業競争力に大きな影響を与えている。経団連が実施したアンケートでは、電力料金が負担可能限度を超えた場合、製造業の6割近くが国内設備投資を減少させ、5割が雇用を減少させると回答した(4月9日号既報)。こうした事態を防ぐため、低廉なコストで安定的に発電することができるベースロード電源を欧米並みの6割程度、確保すべきである。

■ 2030年におけるエネルギーミックス

提言を取りまとめるにあたり、地球産業環境技術研究機構(RITE)に2030年の電源構成とその経済影響・環境影響について、分析を依頼した。その結果を踏まえると、電源構成は再生可能エネルギー15%程度、原子力25%超、火力60%程度が妥当である。そのうえで、再生可能エネルギー比率20%程度を目標に掲げ、技術の低コスト化に取り組むべきである。

■ 2030年のエネルギーミックス実現に向けた取り組み

  1. (1)適切なエネルギー需要想定
    エネルギーミックスを検討する際、将来のエネルギー需要を適切に見通す必要がある。そこで、経済成長率に関して年金財政等、他の政策分野との整合性を確保するとともに、過去のエネルギー需要のトレンドを踏まえるべきである。

  2. (2)原子力
    原子力は環境適合性が高く、経済性・出力安定性の面でも優れており、ベースロード電源として大きな役割を果たすことが期待される。既存プラントを最大限活用するとともに、リプレースも視野に入れ、原子力損害賠償制度の見直し等を進めるべきである。

  3. (3)再生可能エネルギー
    再生可能エネルギーはエネルギー安全保障や地球温暖化防止の観点から高いポテンシャルを有しており、持続可能なかたちで導入する必要がある。そこで、コスト低下等のための研究開発を推進するとともに、エネルギー基本計画における導入目標や固定価格買取制度を抜本的に見直すべきである。

  4. (4)化石燃料
    化石燃料は今後とも、国民生活や事業活動を支える重要なエネルギー源であり、高効率化・低炭素化を図りながら、有効活用すべきである。

■ エネルギーの安定供給に向けた環境整備

  1. (1)エネルギーシステム改革
    改革の目的は安価な価格でのエネルギーの安定供給であり、諸外国の経験を参考に、価格高騰や供給不安が生じないようにすべきである。

  2. (2)地球温暖化対策税
    地球温暖化対策税については、廃止を含めた抜本的見直しが必要である。使途拡大や森林吸収源対策等のための新たな課税は容認できない。

  3. (3)地球温暖化対策
    わが国が排出する温室効果ガスの約9割がエネルギー起源CO2であることに鑑み、国内の温暖化対策はエネルギーミックスに基づいて決定されるべきである。

※提言の全文は http://www.keidanren.or.jp/policy/2015/032.html 参照

【環境本部】