Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2015年5月14日 No.3223  生活困窮者の自立支援の取り組み聞く -社会貢献担当者懇談会

経団連は4月21日、東京・大手町の経団連会館で社会貢献担当者懇談会(金田晃一座長、山ノ川実夏座長)を開催した。生活困窮者自立支援法が4月から施行されたことを受け、今後の自立支援の方向性やモデルとなる事例について、全国社会福祉協議会の渋谷篤男理事・事務局長、自立支援センターふるさとの会の佐久間裕章代表理事から説明を受けた。説明の概要は次のとおり。

■ 生活困窮者自立支援事業と福祉相談の行方=渋谷氏

渋谷氏

生活困窮者自立支援法に基づき、福祉事務所を有する自治体では自立支援事業を実施することになった。事業の特色は自立相談を実施することで、生活と就労に関するワンストップの窓口で相談を受けるとともに、各人の状況に合わせた自立支援計画を作成する。地域の社会福祉協議会は、5割程度の自治体で受託実施者になる見込みだ。

自立支援事業のうち、企業との関係では就労支援、特に継続的な就労が難しい人に中長期的に実際の職場で就労に慣れてもらうことを目的とする就労訓練事業(中間的就労)の実施が期待される。

これからの社会福祉法人には、制度を実施するだけではなく、制度から漏れている地域ニーズにも目を向けることが求められている。その際には、地域の住民やボランティア等との連携を重視すべきだ。この点、企業もまた地域の担い手であるから、地域で展開される助け合い活動の一翼を担ってもらいたい。

■ 低所得高齢者等の住まいと生活支援=佐久間氏

佐久間氏

ふるさとの会は1990年から生活困窮者支援を行ってきた。最近では、支援対象者に占める身寄りのない高齢者の割合が高くなってきた。

われわれはまず、住まいの提供を行い、それから生活支援、地域での仲間づくりにつなげていく。路上生活を送っていた人でも、こうして生活基盤を安定させられれば、地域のサポートから漏れないようになる。

住まいの支援では、身寄りのない高齢者のために、われわれが保証人を引き受けたり、生活サポートに駆けつけたりする体制を整えている。こうして貸主の信頼を得て、今では一棟借りして高齢者を受け入れられる物件も持てるようになった。

また、生活支援の一環として、就労に関心のある若年者を雇っている。彼らには、高齢者の食事の配膳支援等を引き受けてもらっている。こうして、高齢者の介護と就労機会の創出とを両立している。この仕組みがうまく働いて、現在入院を余儀なくされている高齢者が地域で受け入れられ、支援を受けながら生活を送れる環境ができれば、地域経済に新しい雇用と消費が生じるだろう。

【政治・社会本部】