Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2015年6月18日 No.3228  最近の中東等における国際テロリズム情勢聞く -「国際テロリズム要覧」改訂踏まえ/上川法相、野々上公安調査庁長官から/経済外交委員会

説明する上川法相(左)と野々上公安調査庁長官

経団連ではグローバルなビジネス展開を支える経済外交を戦略的に推進する観点から、4月14日に「わが国経済外交のあり方に関する提言」を取りまとめ公表した。提言で要望しているとおり、世界各地のテロ・暴動が日本企業の生産拠点等に甚大な影響を及ぼすリスクが増大するなか、危険地域の治安情勢に関する確度の高い情報を収集、分析することは極めて重要な課題である。

こうした折、法務省・公安調査庁が「国際テロリズム要覧」を改訂したしたことを受け、経団連の経済外交委員会(大林剛郎共同委員長、中野和久共同委員長)は1日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、上川陽子法務大臣のあいさつの後、野々上尚公安調査庁長官から最近の中東等における国際テロ情勢に関する説明を聞いた。説明の概要は次のとおり。

■ 上川法務大臣あいさつ要旨

日本企業・邦人の安全確保を支えるのが政府の最も基本的な責務である。公安調査庁では「国際テロリズム要覧」を定期的に改訂し、国際テロの動向について地道な情報収集・分析を重ねてきた。

さらに、公安調査庁は、わが国で情報収集・分析を担うインテリジェンスコミュニティのコアメンバーとして、全力を挙げて情報収集・分析機能の強化に取り組んでいる。

今後、2020年の東京オリンピック・パラリンピックも見据え、テロ対策の抜本的な強化に向けて、情報収集を質量ともに強化していくことが不可欠である。本日の会合を公安調査庁と経団連の実質的な連携強化の機会としていただきたい。

■ 野々上公安調査庁長官説明要旨

  1. (1)「国際テロリズム要覧」について
    公安調査庁は1993年以降、「国際テロリズム要覧」を隔年(2013年以降は毎年)発刊するとともに、企業や業界団体等の要望に応じ、国際テロ情勢や外国駐在時の安全対策等に関する講演も実施している。15年版では、国際テロ情勢や注目される国際テロ組織等の動向、わが国をめぐる国際テロの脅威等を分析している。

  2. (2)国際テロの傾向
    豪州や米国などを拠点とするシンクタンクによると、13年の国際テロ発生件数は約1万件、死者は1万7958人(対前年比61%増)を数え、死者数増加率が過去14年で最大となった。犯行主体が明らかなテロ事件における死者数の66%は(1)アルカイダ(2)イラク・レバントのイスラム国(ISIL)(3)タリバン(4)ボコ・ハラム――の4組織によって占められている。
    また、イラク、アフガニスタン、パキスタン、ナイジェリア、シリアの5カ国がテロ発生件数の60%以上、死者数の80%以上を占めている。

  3. (3)ISILの現況と影響
    ISILはもともとテロ集団「イラクのアルカイダ」として結成されたが、06年以降の駐留米軍等の掃討を受け、10年までに弱体化していた。ところが11年末の米軍撤退後、拘留されていた元戦闘員が釈放され組織に合流したほか、外国人戦闘員等を吸収したことなどにより、シリアやイラク西部・北部の広域を占拠するに至っている。
    ISILは人員・資金・武装等を継続的に獲得し、多言語を駆使した宣伝戦略に長けている。最近は中東以外の地域への領土拡張を宣言しており、インドネシアやマレーシア等での影響が懸念される。

  4. (4)わが国をめぐる国際テロの脅威
    国際テロ組織の脅威から海外在留邦人・企業の安全を確保しつつ、同組織関係者の入国を阻止することなどが課題である。
    公安調査庁としては、国内外関係機関との連携や海外進出企業等との情報共有等を通じて、情報収集・分析機能の強化を図っていく。

【国際経済本部】