Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2015年6月18日 No.3228  「中国情勢と日中関係」 -外務省アジア太平洋局の下川審議官から聞く/中国委員会

経団連の中国委員会(友野宏委員長、大坪文雄共同委員長)は5月27日、都内で会合を開催し、外務省アジア太平洋局の下川眞樹太審議官から、「中国情勢と日中関係」をテーマに説明を聞いた。説明の概要は次のとおり。

1.中国の国内情勢

中国国内では、腐敗・汚職、格差、環境問題、経済成長の鈍化、少数民族問題といった課題が山積している。習近平国家主席は国民の党への信頼を回復するため、反腐敗を徹底し、汚職官僚や党員を次々と摘発した。また、習近平主席がトップを務める部門横断的組織の新設や、自身が信頼する人物の幹部登用等によって体制を固め、権力基盤を強化している。

2.中国の外交政策

経済外交策として打ち出しているのが「一帯一路」とアジアインフラ投資銀行(AIIB)である。「一帯一路」は古代シルクロードなどを中心とした広範囲な地域でインフラ整備、貿易円滑化、資金融通等を促進する経済圏構想である。

アジア地域のインフラ整備を資金面から支えるツールの一つがAIIBであり、創設メンバー候補も57カ国に増えるなど注目されている。しかしAIIBには、公正なガバナンスの確立、債務持続性の確保、環境・社会に対する影響への配慮など懸念材料もある。わが国は参加の表明を見送り、情報収集を進めている。

中国はこうした経済外交では周辺国と協調する一方、領有権や権益が絡む問題については強硬姿勢を取っている。尖閣諸島周辺の領海への度重なる侵入や、南シナ海での大規模埋め立て等、拡張主義的な傾向が強く、国際社会として注視していかなければならない。

3.日中関係の展望

尖閣問題や安倍首相の靖国神社参拝などによって両国の関係は長らく冷え込んでいたが、2014年半ば以降、日中双方において関係改善の機運が高まった。14年11月に北京で開催されたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)では、2年6カ月ぶりに日中首脳会談が行われ、東シナ海での協力や東アジアの安全保障環境の安定など短中期的に重要なテーマについて議論した。その後は、長い間停滞していた各種対話・協力の再開など関係改善が続いている。

15年5月には、インドネシアでのバンドン会議60周年記念行事にあわせ、日中首脳会談を実施し、関係改善の流れを確かなものとしていきたいとの双方の意思が確認された。今後もより高い政治レベルでの対話が進むことが期待される。

他方、両国関係の基盤となる国民感情は一貫して悪化している。「爆買い」で注目される訪日客が経済のみならず対中印象の改善にも貢献してくれることを期待している。戦後70周年という節目の年を迎え、中長期的にいかに日中関係の高度化を図っていくのか考えていかなければならない。

【国際協力本部】