Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2015年6月25日 No.3229  ダイバーシティ時代の働き方やマネジメントのあり方テーマに意見交換 -女性の活躍推進委員会

左から佐藤教授、伊藤委員長、吉田委員長

経団連の女性の活躍推進委員会(伊藤一郎委員長、吉田晴乃委員長)は16日、都内で会合を開催し、中央大学大学院の佐藤博樹教授から、女性の活躍推進ならびに働き方の改革について説明を聞くとともに、意見交換を行った。
講演の概要は次のとおり。

女性の活躍推進が政府の成長戦略の中核に位置づけられ、企業も女性の活躍推進に力を入れている。また、女性活躍推進法が今国会で成立することが確実視されるなか、ますます注目が集まることが予想される。しかし、推進の手法を間違えている企業も多い。女性の活躍推進は、女性だけの問題ではない。男性も含めた「働き方」を見直すべきである。

少子高齢化の進行に伴い、日本の労働力人口が減少するなか、従来型の人材を大量に確保することに限界が見えている。今後の企業経営には、必要な「適材」を多様な人材のなかから選択し、その人材が活躍できる組織・風土を構築することが求められている。適材の範囲を広げることが「ダイバーシティ経営」であり、日本人だけではなく外国人も、男性だけではなく女性も、フルタイム勤務ができない時間制約のある人も、この適材の範囲に入れていくことが重要である。ダイバーシティ経営は、女性の活躍推進につながるとともに、時間制約のある社員を活かすという意味でワーク・ライフ・バランスにもつながる。

これからは、時間資源を有限な経営資源ととらえ、その時間資源の範囲内で実現可能な仕事の付加価値の最大化を目指す働き方を目標としたい。無駄な仕事の排除、仕事の優先順位づけ、仕事の効率化、職場成員のレベルアップによる能力向上などにより、時間資源を合理的・効率的に活用すべきである。これにより、日本が諸外国に比べ低いとされるホワイトカラーの生産性の向上も期待できる。

また、女性活躍(雇用機会均等度)とワーク・ライフ・バランスの関係性を照らし合わせてみると、企業は両立支援制度の拡充に邁進しがちだが、それが女性の活躍推進に寄与していないことに気づいていない。企業の持続的成長の観点から両立支援制度は法定どおりで問題はなく、それ以上に男女ともに、フルタイムで無理なく働けるような環境の整備や支援が必要なのである。

さらに現在、企業は女性管理職が増えないという課題に直面しているが、この原因を「女性の意欲の低さ」に結びつけることは間違いである。初期キャリアにおいて能力開発の機会を男女で均等に創出できておらず、その結果、女性のモチベーションが削がれていることに目を向けるべきである。能力開発機会の創出は上司のマネジメントに依存するため、配属先の上司の役割が極めて重要である。今後の部下の属性や価値観の多様化を踏まえると、部下の役割を理解し、期待される役割を実現するための能力を持ち、社員の仕事意欲を高い水準で維持することができる「ワーク・ライフ・バランス管理職」が望まれる。

ワーク・ライフ・バランス管理職が評価され、増えている企業では組織成果が高いというデータもある。このような働き方を実現するために、企業は自社の実態を把握し、課題を乗り越えるためどのように働き方を変えていくべきか、主体的に考え取り組むべきである。

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講演後の委員との意見交換では、管理職の評価や育成、女性の管理職登用への具体的な手法、生産性と労働時間との関係性や考え方などについて、活発な意見が交わされた。

【政治・社会本部】