Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2015年10月8日 No.3241  21世紀政策研究所が欧州で競争法審査手続に関する調査実施 -EU・英国の規制当局や経済団体・法律事務所等でヒアリング

欧州委員会のヨース・ストラジエ聴聞官(左)
との会議(左から2人目は上杉研究主幹)

21世紀政策研究所(榊原定征会長、三浦惺所長)は、「独占禁止法審査手続の適正化に向けた課題の研究」(研究主幹=上杉秋則・フレッシュフィールズ・ブルックハウス・デリンガー法律事務所シニアコンサルタント)の一環として、9月8~11日、上杉研究主幹を団長として欧州(ロンドン・ブラッセル)を訪問、競争法審査手続に関する調査を行った。

近年、企業活動の国際化に伴って、グローバルなカルテル事案が頻発している。こうしたなか、相対的に防御権が不十分な日本の制度によって、日本企業が審査や訴訟の面で不利な立場におかれているとの懸念がある。例えば、海外では権利として保護されている弁護士・依頼者間秘匿特権が日本では認められないなどである。昨年、内閣府に「独占禁止法審査手続についての懇談会」が設置され、弁護士・依頼者間秘匿特権、供述録取過程の透明化などについて議論がなされたものの、根本的な改善は実現していない。

そこで、21世紀政策研究所では、グローバルな動向を踏まえ、日本の独占禁止法の審査手続の適正化を図るための研究を開始し、現在、日本と同様に行政調査を主体とする欧州の制度を参考にして研究を進めている。

今回の欧州調査では、欧州委員会の競争総局、英国の競争市場当局(CMA)といった規制当局に加えて、欧州委員会の聴聞官(ヒアリング・オフィサー、当局と企業の間に立ち独立した立場で審査手続の適正性を確保)であるヨース・ストラジエ氏、さらに英国産業連盟(CBI)から企業側の意見を聞くなど、欧州および英国において審査手続の適正化がどのように進められたかなどを調査した。

また、競争法部門において欧州で最も有力な法律事務所であるフレッシュフィールズ・ブルックハウス・デリンガーを訪問し、実務面においてどのように企業の防御権を確保しているかなどについて調査を行った。さらに、日本機械輸出組合ブラッセル事務所の福永哲郎所長および在英国日本大使館の松浦博司公使を訪問し、欧州における日系企業の状況や政治および経済全般について幅広く意見交換をした。

今回の調査の結果、欧州では、弁護士・依頼者間秘匿特権の保護をはじめとして、企業の防御権に十分な配慮を行うことで、審査手続の適正性・透明性が確保されるだけでなく、そうした環境が企業のコンプライアンス体制のさらなる充実を促していることがわかった。

また、当局にとっては、コンプライアンス体制が充実した企業に対して報告命令を活用することで審査手続の効率化にもつながっているように感じられた。

同研究では、今回の調査結果を踏まえて、来年3月を目途に研究成果を取りまとめる予定である。

【21世紀政策研究所】