Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2015年10月15日 No.3242  21世紀政策研究所が韓国の政府機関・研究機関と少子高齢化・地域活性化で意見交換

地域発展委員会の姜明秀政策総括局長(左)
と小峰研究主幹

21世紀政策研究所(榊原定征会長、三浦惺所長)は今般、日韓関係の強化を図るため、韓国の梨花女子大学の通訳翻訳大学院と覚書を締結し、同研究所の研究主幹らによる講義をスタートさせた。この一環として9月14、15日に小峰隆夫研究主幹が訪韓し、日本の少子高齢化問題について講義を行うとともに、同問題に加え地域活性化をテーマに韓国の政府機関および研究機関と意見交換した。

14日には韓国の地域活性化を担当する「地域発展委員会」と懇談。同委員会は大統領の直属機関として、昨年策定された「地域発展5カ年計画」の推進など地域政策を総括・調整する役割を担っている。日本と同様、韓国も地方における人口減少やソウルへの一極集中など地域間格差の拡大が喫緊の課題となっており、双方の現状や取り組み策について活発な質疑が行われた。韓国の地域活性化は地方自治体からのボトムアップが特徴であり、例えばインフラの整備など住民生活の向上に資する政策を地方自治体自らが策定し政府がそれを支援する枠組みをとっている。

なお2012年以降、ソウルの主要官庁の世宗(セジョン)市(ソウルの南120キロメートル)への移転を進めており、さらに154の公共機関についてもすでに136機関を地方へ移転済みである。

翌15日には、韓国の経団連にあたる全国経済人連合会(全経連)とその研究機関である韓国経済研究院(KERI)と懇談した。はじめに小峰研究主幹から日本における少子高齢化対策について説明した後、議論が交わされた。

韓国の少子高齢化は日本を上回るスピードで進行しており(合計特殊出生率は日本の1.42に対して1.21)、政府の打つ対策も効を奏していない。KERIでは、先ごろ外国移民の積極的受け入れを提案するレポートを公表したが、移民に関してはネガティブな意見も多く、大きな議論となっている。

また、全経連からは、地域活性化に関し、創造経済革新センターによる取り組みが紹介された。同センターは全国17カ所に設置され、各地域ごとに担当する財閥企業を設定(例=サムソンは大邱・慶北を担当)、財閥企業がメンターとして地域内のベンチャー企業の指導・育成をバックアップしている。中央政府・地方政府と企業によるコラボレーションは世界でも例をみない取り組みであり、多数の成功事例を生んでいるとのことであった。

今回の意見交換において、韓国は少子高齢化・地域活性化という同じ課題を抱えることから、日本の対応についての関心は極めて高いものがあった。一方で、韓国独自の政策もみられ、今後、日本における処方箋を検討するうえでのヒントを得ることができた。

【21世紀政策研究所】