Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2016年1月1日 No.3252  ダイバーシティ・マネジメントセミナーを開催 -多様な人材の活用や働き方を考える

経団連は12月15日、東京・大手町の経団連会館で内閣府と共催で「ダイバーシティ・マネジメントセミナー」を開催した。同セミナーは、提言「女性活躍アクション・プラン」(2014年2月公表)に基づき、経営戦略としてのダイバーシティ時代の働き方やマネジメントについて考えることを目的としており、企業の管理職を中心に約150名が参加した。

■ 基調講演「ダイバーシティ時代の働き方~イクボスで業績と笑顔がアップ」
川島高之三井物産ロジスティクス・パートナーズ社長

イクボスとは、部下の私生活と将来のキャリアを理解・応援し、自分自身もワーク・ライフ・バランス(WLB)を満喫しつつ、組織の長として職責を全うし、業績責任を強く持つ上司を指す。

今、なぜイクボスが求められているのか。背景には、成熟期を迎えた日本で、働く時間や場所に制約がある労働者が約7割に上り、多様な人材や働き方が認められるダイバーシティ社会へ移行する時期に差しかかっている現状がある。また、さまざまな人材が集まるダイバーシティ組織が、これまでの画一的で均質な男性正社員カルチャーが失いかけている市場対応力を再構築してくれる。

イクボスが率いる組織は、上司も部下も、仕事以外の時間を通じて視野や人脈が広がり、効率的かつ主体的な働き方が身につき、仕事能力が向上する。よって、おのずとやる気が高まり、チーム力が向上し組織力も向上する。その結果、企業にとってのリスク(社員の労災、隠蔽や不正行為、離職率等)が軽減するとともに、組織の生産性が向上し業績がアップする。この流れを企業が実現するため、経営者や管理職にこれまでの固定化した価値観や仕事のやり方、男女の役割意識を変え、それぞれの人材の能力を活かし、チーム全体の生産性を向上させるマネジメントが求められている。

それではイクボスになるにはどうすればよいか。まず部下と双方向の関係をつくり、自分の情報を開示し、部下の私生活を知る。部下の私生活の充実を推奨し、WLBを自分ごとととらえさせて、チーム内で「お互いさま」の意識を醸成する。そして、部下のWants、Can、職場のNeedsを一致させるよう心がけ話し合いを続けていく。さらに、仕事のゴールを定めたら細かい管理や指示をせず、部下を信じ任せることや、部下の時間を奪わないことも重要である。

イクボス組織を構築するためには、チーム全員が生産性向上を念頭に置き、3つの時間泥棒「何も決まらない会議」「やりとりがダラダラと続くメール」「やりすぎな社内資料の作成」を見直したい。WLBは与えられるものではなく取りにいくものである。できない理由を挙げるのではなくできる手段を考えること、覚悟を決めてあきらめずにやり抜くことで、会社を変えていくことができる。

■ 事例紹介

基調講演に続き、仕事と育児等の両立により柔軟な働き方と生産性向上を推進しているモデルケースとして、NTTグループで男性社員が6カ月の育児休暇を取得した事例が紹介された。上司の立場からエヌ・ティ・ティ・コムウェアネットワーク事業本部の森伸二氏は「育休を取りたいと相談された時は一瞬驚いたが、これまでの仕事ぶりをみていて、彼なら大丈夫と思い了承した。日ごろの信頼関係がベースにあった」と話した。

育休を取得した日本電信電話NTTネットワークサービスシステム研究所の中島求氏は「育休取得でさまざまな気づきが得られた。マルチタスクで仕事を進められるようになり、何よりもコミュニケーション能力が上がった」と仕事への効果を語った。

右から川島氏、森氏、中島氏

※ なお、1月19日に大阪国際会議場で同内容のセミナーを開催する。

【政治・社会本部】