Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2016年1月7日 No.3253  東日本大震災の被災地視察を実施 -福島の今を知り、継続的支援を考える

1%(ワンパーセント)クラブでは、災害ボランティア活動支援プロジェクト会議(支援P)、東日本大震災支援全国ネットワーク(JCN)との共催で、企業の被災地支援担当者による現地視察を昨年度に引き続き実施した。今年度は、12月2日から4日にかけて福島県を訪問し、双葉郡からの避難者が中心になって活動している団体などの活動現場を視察するとともに、意見交換を行った。

■ 帰還に向けて重要になる「町外コミュニティ」

東日本大震災からまもなく5年。復興に向けた道のりは、「集中復興期間」から「復興創生期間」へと移行するが、2015年夏に実施された住民意向調査では、帰還の意思表明をしている住民は2割以下、3割は判断がつかないと回答している。そのため、双葉郡の住民が自治体の枠を超えてつながり、それぞれの町村を見学しあって避難解除について考える双葉郡未来会議などの動きが始まっていた。

また、集団で避難している地域で地元住民の信頼と支援を得ながら「町外コミュニティ」を構築し、避難先とふるさとをつなごうという試みもみられる。郡山市の仮設住宅団地に設置された「富岡町社会福祉協議会」は、生活支援相談員による巡回、見守り、相談活動のほか、災害FMラジオによる富岡弁での地域密着情報の発信、町民と地域住民が一緒に活動する場となっている。

二本松市の「NPO新町なみえ」は、日本全国に避難した浪江町民との交流、祭りなどの地域文化の伝承、復興計画への提案などを行ってきた。現在では、県営復興公営住宅に隣接した土地に、自立再建住宅や各種の施設、商店などを建設する計画を進めている。

■ 連携が道を切り拓く

「しんせい」では授業形式で担当者とメンバーが活動紹介

郡山市の「しんせい」では、避難生活の続く障がい者の自立に向けた支援を実施。12の就労系事業所が連携し企業やNGOから協力を得て、焼き菓子や手工芸品の製造・販売を行っている。しんせいと連携する小規模作業所の1つ、浪江町の「コーヒータイム」は、町役場、商工会の協力を得て二本松市民や浪江町民の憩いの場として二本松市にカフェを開設している。カフェでは、軽食の提供とともに作業所の製品や地域住民の手工芸品の展示・販売も行っている。

両団体ともに、避難者の格差や孤立、帰還という課題を抱えながらも、避難先に根を下ろしてさまざまな団体と連携して活動し、誰も取り残さないというメッセージを発信し続けている。明るく前向きな姿勢に企業の担当者も共感し、企業内マルシェや社内でのボランティア活動など具体的な支援策も話し合われた。

【政治・社会本部】