Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2016年1月28日 No.3255  大規模災害発生を見据えたインフラ整備のあり方聞く -国土地理院・国交省と意見交換/社会基盤強化委員会企画部会

経団連の社会基盤強化委員会企画部会(伊東祐次部会長)は12日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、越智繁雄国土地理院長と国土交通省の小林靖総合政策局参事官から大規模災害発生を見据えた社会システムやインフラ整備について説明を聞くとともに、意見交換を行った。
説明の概要は次のとおり。

■ 東日本大震災の経験と教訓~幅を持った社会システムの構築を(越智氏)

越智国土地理院長

  1. (1)東日本大震災での経験と教訓
    2011年3月11日の東日本大震災の発災当時、内閣府(防災)で地震・火山・大規模災害対策を担当していた。震災直後には、首相官邸に設置された緊急災害対策本部で物資調整・調達等にあたり、10日後には宮城県の現地対策本部で被災地対応等に取り組んだ。
    東日本大震災のような大規模災害発生時には、救命救助、緊急物資輸送などのための道路啓開や、「自助」「共助」の地域社会の形成が重要だと感じた。また、災害経験を継承すること、安全な場所の土地勘を養うこと、地域でのコミュニケーション力を高めておくことなどが重要である。

  2. (2)幅を持った社会システムの構築に向けて
    災害に負けない国土、地域づくりのためには「幅を持った社会システム」の構築が課題である。社会が超効率化、過効率化した場合、かえって災害に対して脆弱性を持つことになるため、冗長性、代替性を有し、何が起きても致命的破壊に至らないといった「幅を持った社会システム」を構築することが重要である。そのためにも、全体として機能不全に陥らないよう個々の施設や取り組みの相互連携など、個別最適と全体最適の両立を図ることが必要である。

  3. (3)国土地理院の災害対応
    国土地理院は、測量・地図分野の最新技術を活用し、地殻変動の監視や地理空間情報の整備・提供を行っている。昨年9月には、想定浸水区域等のハザード情報、インフラや交通網の被害情報等を1つの地図上で表示できるDiMAPS(ディーマップス)という統合災害情報システムを開発し本格運用を開始した。是非、防災・減災に向けて活用いただきたい。

■ 防災・減災と経済波及効果の両面におけるインフラ整備の重要性(小林氏)

小林参事官

  1. (1)社会資本整備推進の必要性
    わが国が持続的な経済成長を実現していくうえで、生産性を向上させる「ストック効果」の高い社会資本整備の推進が不可欠である。そのため、国土交通省として、限られた予算を最も効果的に活用するインフラマネジメント戦略への転換を図っている。

  2. (2)ストック効果とは
    社会資本のストック効果とは、次の3つの効果を意味する。
    第1に、安全・安心効果であり、地震、津波、洪水等の災害への安全性を向上させる。第2に、生活の質の向上効果であり、衛生状態の改善、生活アメニティ等の生活水準の向上に寄与する。第3に生産性拡大効果であり、移動時間の短縮や輸送費の低下等によって、経済活動の生産性を向上させる。

  3. (3)ストック効果の具体例
    これらの具体例として、例えば、圏央道の整備・開通は、渋滞解消や物流の効率化・高度化等の生産性の向上に寄与する。実際に、圏央道の開通に伴い、物流施設の立地が進んでいる。
    首都圏外郭放水路の整備は、中川・綾瀬川流域の水害による浸水被害を10分の1以下に削減し、防災対策に資するとともに、当該地域での新たな企業進出を促進している。
    また、社会資本整備の現場の生産性向上に向けて、国土交通省では測量・設計から施工、管理に至る全プロセスの情報化を前提とした新基準 i-Construction を導入した。これによって、技能労働者1人当たりの生産性向上が可能となり、技能労働者の処遇の改善、現場の人材確保の円滑化につながる。

【政治・社会本部】