Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2016年3月10日 No.3261  オープンイノベーションによる産業競争力強化 -産業革新機構の取り組みを聞く/起業・中堅企業活性化委員会

説明する産業革新機構の志賀会長(左)と勝又社長

経団連の起業・中堅企業活性化委員会(荻田伍委員長、根岸修史委員長、立石文雄委員長)は2月16日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、産業革新機構の志賀俊之会長、勝又幹英社長、土田誠行専務執行役員から、オープンイノベーションによる産業競争力強化、ベンチャー企業の成長に向けた同機構の取り組みについて説明を聞くとともに懇談を行った。

■ 産業革新機構の果たすべき役割

はじめに、志賀会長から、産業革新機構の果たすべき役割が、グローバルに戦える企業を創出するための「産業界の再編統合」と、ベンチャー企業への戦略的投資をはじめとする「イノベーション・エコシステムの構築」の2つにあること、また主要国では産学官連携を中心に官民が一体となって産業競争力の強化に努めており、わが国もオープンイノベーションを産業競争力強化につなげるため、主体的に活動を進めていることについて説明があった。次に勝又社長からは、同機構の投資方針について、民間ファンドにはない軸である「日本のアカデミア発技術の事業化」といった、エコシステムの構築効果などでのインパクトのある投資を行う方針であるとの説明があった。

■ ベンチャー・エコシステムの構築に向けて

続いて土田専務執行役員から、ベンチャー企業に対する取り組みについて説明を受けた。すでに同機構のベンチャー企業への直接投資が計48件に上っており、ベンチャー投資のフィールドに約820億円の資金供給を行っている国内最大級のベンチャーキャピタルであることや、政府の成長戦略と連動し「IoT・ビッグデータ・AI」「ロボット」および「健康・医療」の3つの注力領域を設定し投資していることなどが紹介された。

加えて土田氏は、ベンチャー企業と大企業によるオープンイノベーションが産業競争力強化の肝であると述べ、外部資源の活用にかかわる経営層の積極的な意識が組織に浸透しきっていないことが日本企業の課題であると指摘した。そのうえで同機構では「大企業にとって魅力的に思えるベンチャー企業への育成」に注力しており、資金供給に限らずベンチャー企業を「鍛え上げる」ことと「パートナーとして繋ぎ込む」ことに力を入れつつ、経営者問題、技術信奉などのマインド改革、知財戦略不足などの広範な課題の解決に向けて支援をしている旨を説明した。

■ 求められる大企業の役割

意見交換においては、立石委員長から、大企業が投資に加えて「調達」を行うことが、ベンチャー企業の信用力強化に大きく寄与するとの自社の経験に基づいた意見や、大企業としてもそうした取り組みを拡大する必要があるとの発言があった。会合を通じて、同機構と経団連との間で、より具体的な連携を進めていくべきとの認識が委員会で共有された。

【産業技術本部】