Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2016年4月21日 No.3267  次世代を担う人材を育成するために求められる教育改革について聞く -東京学芸大学の岸名誉教授から/教育問題委員会

説明する岸名誉教授

経団連は7日、東京・大手町の経団連会館で教育問題委員会(中西宏明委員長、渡邉光一郎委員長)を開催した。東京学芸大学名誉教授の岸学氏から、これからの人材に求められる「21世紀型学力」や、それらを育成する役割を担う教員に必要な素質・能力などについて説明を聞くとともに懇談した。説明の概要は次のとおり。

■ Education2030(OECD)

「Education2030」は、複雑で予測の難しい2030年の世界を生きる子どもたちを対象に、(1)育成すべきコンピテンシー(資質・能力)は何か(2)それをどのように育成するか――をOECDが加盟各国協力のもとで考え、提案する事業である。第1フェーズ(2015-18年)では、01年にOECDが定めた育成すべき主要なコンピテンシーの内容を見直し、21世紀型コンピテンシーを提案するとともに、その内容をOECDが18年に実施するPISA(児童の学習到達度調査)で評価するグローバル・コンピテンスに反映させることも視野に入れている。

■ 日本の学校教育の現状

東京学芸大学は、OECDと日本政府の共同プロジェクトの一環として、次世代教育研究推進機構においてOECDとの共同研究を実施しているほか、日本の学校教育の現状分析も行っている。生きる力の育成に向けて「確かな学力」「豊かな人間性」「健康・体力」を重視する日本の教育において、「どのような」資質・能力が、「どのように」育成されているかについて、小学校の授業をビデオ収録したうえで調査し、「Education2030」で提案される21世紀型コンピテンシーとの関係を検討している。

一例として、体育の授業で生徒同士がホワイトボードを使って反省点や改善点を考え、互いに教え合っている様子を観察すると、日本の小学校の授業はアクティブ・ラーニング(注)として、非常に高い水準にあると考えられる。現在、中学校での授業収録を準備しており、さらなる分析・調査を進めたうえで、最終的に21世紀型コンピテンシーの育成に関する指導モデルを提案し、世界に向けて日本発教育システムとして輸出することなども検討している。

今後の課題としては、第1にアクティブ・ラーニングを有効に取り入れて授業を行うことのできる教員の養成、第2に英語で授業ができる小学校教員の育成がある。英語を苦手とする小学校教員が多い現状では、英語での授業もままならない。いずれも教員養成課程の早い段階からの取り組みが必要であり、特に英語習得に関しては海外日本人学校での教育実習制度の導入も検討している。

■ 企業と学校の人事交流を期待

産業界への期待としては、企業人が学校で出張授業を行うことを推進してほしい。企業人はその職場経験に応じて教員が持たないスキルを持っている。学外の専門家を小・中・高校に専門職員として迎え、チームで子どもたちを教育していく制度である「チーム学校」の浸透・定着のためにも、企業と学校間の人事交流を推進してほしい。

(注)アクティブ・ラーニング=教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた学習法の総称

【教育・スポーツ推進本部】