Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2016年4月28日 No.3268  今後の地球温暖化対策めぐり環境省と意見交換 -環境安全委員会

昨年末にフランスのパリで開催されたCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)では、気候変動政策に関する2020年以降の新たな国際枠組み「パリ協定」が採択された。これを踏まえ、現在政府では、国内の温暖化対策に関する検討が進められている。

そこで経団連の環境安全委員会(木村康委員長、徳植桂治委員長)は6日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、環境省の小林正明地球環境審議官から、今後の温暖化対策をテーマに説明を聞くとともに、意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ パリ協定の評価と今後のスケジュール

COP21で採択されたパリ協定は、すべての国が参加する歴史的な国際枠組みである。先進国・途上国を含むすべての国が、自ら削減目標を設定し実施状況を報告するとともに、専門家によるレビューを受けることが盛り込まれるなど、日本政府および経済界がかねてから主張していた内容となった。一方、資金拠出については、先進国・途上国間で対立があり、途上国は自主的に資金を提供することとされた。

パリ協定の発効要件は、「55カ国以上の締結」かつ「締結国の排出量が全体の55%以上を占める」ことである。今月22日から1年間の署名期間に入るが、米国・中国はすでに署名の意向を示している。政府としても今後のスケジュールを意識しながら作業を進めている。

■ 2030年度目標について

日本が国連に登録している「約束草案」では、2030年度の温室効果ガス排出量を2013年度比マイナス26.0%とする目標を掲げている。とりわけ、業務・家庭部門では、それぞれ4割程度の削減が求められるなど、容易に達成できるものではない。しかし、エネルギーミックスや具体的な対策・施策の積み上げによって実現可能な目標として設定していることから、対策の着実な実行に向けた見通しをつけていかなければならない。そのための「地球温暖化対策計画」を近く取りまとめる予定としている。

■ 地球規模・長期の削減に向けて

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、地球の気温上昇を産業革命前から2度未満に抑えるためには、2050年の世界全体の温室効果ガス排出量を2010年比で40~70%削減する必要があるとの試算を示している。2030年度目標の達成は非常に困難であるものの、日本としても、長期の目標として2050年80%削減を目指し、今から具体的なアクションを起こしていく必要がある。そこで3月29日、丸川環境大臣のイニシアティブにより、長期目標に向けたアクションプランとして、「パリ協定から始めるアクション50-80」を取りまとめた。

具体的な施策としては、(1)国民一人ひとりによるライフスタイルなどの“賢い選択”(COOL CHOICE)の推進(2)地域レベルの温暖化対策の推進(3)国際協力・国際連携の強化(4)未来技術の開発と社会実装(5)環境価値を織り込んだ低炭素投資の促進(6)長期低炭素ビジョン(仮称)の策定――の6点を掲げている。長期ビジョンの策定にあたっては、炭素税や排出量取引制度などの「カーボンプライシング」も検討課題となろう。

これらの温暖化対策について、経済界とも協力関係を築きながら進めていきたい。

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その後の意見交換では、出席の委員から、「2050年80%削減は、東日本大震災以前に掲げられた目標であり、優先すべきは2030年度目標である」「業務・家庭部門における削減を進めるためには、省エネ製品への買い替えや、社会インフラの更新を後押しする具体的施策が必要」といったコメントがあった。

意見交換後、「地球温暖化対策計画」(案)について、長期目標と排出量取引制度の記載の削除等を求めるパブリックコメントの案文を審議し、委員会として了承した。

【環境エネルギー本部】