Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2016年5月12日 No.3269  観光分野における新たな政府目標と具体策を聞く -観光委員会企画部会

安倍首相を議長とする明日の日本を支える観光ビジョン構想会議は3月30日、「明日の日本を支える観光ビジョン」を取りまとめた。そこで経団連は4月26日、東京・大手町の経団連会館で観光委員会企画部会(今泉典彦部会長)を開催し、観光庁の舟本浩観光戦略課長からその概要を聞いた。

■ ビジョンの方向性と目標

観光は、地方創生と成長戦略の柱。ビジョンの目指す方向性は、その実現に向け一億総活躍の場として、観光を基幹産業へと成長させ、「観光先進国」という新たな挑戦に踏み切ることである。日本人も日常的に外国人がいることを受け入れる覚悟が必要ということでもある。

ビジョンの新目標は、2020年までの訪日外国人旅行者数4000万人、訪日外国人旅行消費額8兆円、日本人国内旅行消費額21兆円の実現である。本ビジョンに盛りこまれた施策を実施することで、野心的だが十分実現可能な数字だ。人口減少のなかで国内旅行消費額を維持するのはハードルが高いが、最大限努力したい。

■ 目標実現に向けた具体策

この目標を実現するため、3つの視点で10の施策をまとめた。3つの視点とは、(1)観光資源の魅力を極め、地方創生の礎に(2)観光産業を革新し、国際競争力を高め、わが国の基幹産業に(3)すべての旅行者が、ストレスなく快適に観光を満喫できる環境に――である。

具体策として、(2)では、通訳案内士の規制緩和、民泊ルールの整備、観光版MBAの創設、欧米豪・富裕層向けのプロモーション、100のDMO(Destination Management / Marketing Organization)の形成等を進める。(3)では、顔認証技術等の導入による出入国審査の迅速化、Wi-Fi整備、二次交通の整備による「地方創生回廊」の完備等に取り組む。

なお、同ビジョンを踏まえ、「観光ビジョン実現に向けたアクション・プログラム2016」を現在策定中である。今年度計画期間が満了する「観光立国推進基本計画」も年度内に改訂を予定している。

<質疑応答>

― 地方の現場における連携促進の方法は。
地域の観光振興の中心としてDMOの形成促進を重視。観光はビジネスであり、民間が中心となってDMOを形成してほしい。東京に本社をおく企業からも地方のDMOに人材を派遣してほしい。
― 通訳案内士の拡充策は。
量的な解決が大きな課題。来年の法改正を見据えて検討する。
― 国内旅行の減少要因は。
可処分所得の減少が大きい。旅行と競合する分野の消費拡大もある。所得が伸びないと旅行も伸びないため、政府を挙げて所得増大と休暇改革をはじめとする旅行環境の整備にあわせ技で取り組みたい。

【産業政策本部】