Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2016年5月12日 No.3269  衛星測位に関する課題 -東京大学の柴崎教授から説明聞く/宇宙開発利用推進委員会企画部会・宇宙利用部会

経団連は4月25日、東京・大手町の経団連会館で宇宙開発利用推進委員会企画部会(岡村将光部会長)・宇宙利用部会(西村知典部会長)合同会合を開催した。東京大学空間情報科学研究センターの柴崎亮介教授から、衛星測位に関する課題について説明を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ 宇宙三位一体による社会インフラサービス

宇宙システム、IoT(Internet of Things)、ビッグデータの3つを組み合わせた三位一体により、新しい社会インフラのサービスを展開できる。この10年間で、地上でのモバイル端末が共通インフラとなり、ユーザーの行動にかかるデータを直接取得できるようになった。例えばこのデータを用いて、災害時に人を探索しやすくなる。

宇宙分野では参入障壁が低くなったことにより、東南アジアなどの各国が各種衛星を打ち上げている。これに加えて小型衛星も打ち上げられており、宇宙産業を支える大きな柱の1つになるだろう。アメリカでもスペースXやスカイボックスイメージングなどの新興企業が打ち上げを行っている。

これにより現在、地球全体での降水量をリアルタイムで宇宙から観測できるようになった。例えばバングラデシュは国際河川の下流に位置するが、上流の降水量が把握できるため、洪水が起きた際下流への影響を予測して収穫に対応できる。流域のバングラデシュ、ミャンマー、タイで個別にシステムをつくるのではなく、コンポーネントが共通している統合システムをつくればよい。また、IoTの進展により、航空機や船舶の動きのデータもリアルタイムで見られるようになった。

衛星事業者と携帯電話事業者などのデータを組み合わせることで、新たなサービスを展開できる。例えば気象予報サービスでは、宇宙と地上のデータを分析し、台風の進路を地上の端末に伝える。そのために、データを買い取り、サービスを事業化する機関に渡す「データ投資仲介機関」を創設する必要がある。

今後の準天頂衛星の海外展開にあたっては、学術面の交流よりも、体制構築や人材育成を前面に出し、相手国の民間企業がどう利用するか、産学共同で検討する必要がある。

【産業技術本部】