Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2016年6月23日 No.3275  第105回ILO総会へ代表団派遣 -「グローバル・サプライチェーンにおけるディーセント・ワーク」等を討議

ILO(国際労働機関)の第105回総会が5月30日から6月10日にかけて、スイス・ジュネーブのILO本部・国連欧州本部で開催された。

経団連は、得丸洋・雇用政策委員会国際労働部会長を代表とする日本使用者代表団を派遣した。

■ ガイ・ライダーILO事務局長開会演説

総会の開会式においてILOのガイ・ライダー事務局長は、「世界の雇用・労働環境は、急激に変化している。革新的、生産的な雇用機会が生まれる一方、社会に不平等や分断ももたらしている。ILOはこうした『仕事の世界』の課題の解決に向けて、加盟国とともに取り組んできたが、引き続き最大限の努力を行う。今回の総会では、こうした『仕事の世界』が直面する課題の解決に不可欠な議題を取り上げており、実りある議論が行われることを期待する」と発言した。そのうえで、同事務局長が総会に提出した報告書「The End to Poverty Initiative=The ILO and the 2030 Agenda」について触れ、「本報告書は、世界の貧困撲滅に向けたILOのイニシアティブであり、国連が昨年採択した『持続可能な開発のための2030アジェンダ』の実現にも貢献する。政労使関係者の積極的な協力をお願いする」と述べた。

日本の使用者代表として
演説する得丸部会長

■ 得丸日本使用者代表演説

8日には、得丸部会長が総会本会議場において、日本の使用者を代表して演説を行った。得丸部会長は冒頭、グローバル・サプライチェーンが世界中の雇用創出やディーセント・ワークの提供に大きく貢献していることを指摘したうえで、ILOはサプライチェーンを国際基準等によって規制するのではなく、各国政府のガバナンスに委ねるべきと主張した。

また、日本が少子高齢化に直面するなか、中長期的な成長を遂げるためには、女性の活躍や外国人材の受け入れが重要であり、日本の経済界としても積極的に取り組んでいる旨を紹介した。

なお、同日、塩崎恭久・厚生労働大臣と逢見直人・連合事務局長がそれぞれ代表演説を行った。

■ 各議題の討議結果

今年の総会では、2017~18年ILO事業計画および予算案を承認したほか、技術議題として、(1)「グローバル・サプライチェーンにおけるディーセント・ワーク」(2)「平和、安全および災害からの回復のためのディーセント・ワーク=ILO第71号勧告の改正」(3)「社会正義宣言の影響評価」――の3つのテーマに関して討議が行われ、各議題について結論文書が取りまとめられた。

「グローバル・サプライチェーンにおけるディーセント・ワーク」の結論文書ではまず、グローバル・サプライチェーンが世界の経済成長、雇用創出、労働者の能力開発、生産性や産業競争力の向上、貧困の撲滅等に幅広く貢献を果たす一方、労働安全衛生、労働時間、賃金等の適切な労働条件を損なう事例もみられると指摘した。そのうえで、グローバル・サプライチェーンにおける労働環境の改善に向けて、加盟国政府は適切な労働環境の確保、労働者の基本的権利の保障、企業に対する支援等の取り組みを促進すべきとした。またILOについては、加盟国に対する支援やG7、G20、OECD等との連携強化を図るべきとした。

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今回の討議結果を踏まえ、ILOは今後、政労使会合や専門家会合を開催し、グローバル・サプライチェーンにおける労働環境の改善に向けて、事例収集や分析、ILOが採るべき方策の検討を進める予定である。

【国際協力本部】