Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年1月1日 No.3298  水・大気環境行政の重要課題等聞き意見交換 -環境安全委員会環境リスク対策部会

経団連は11月28日、東京・大手町の経団連会館で環境安全委員会環境リスク対策部会(唐津正典部会長)を開催した。環境省の高橋康夫水・大気環境局長から、水・大気環境行政の重要課題等について説明を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ 土壌汚染対策法の見直し

16年3月から、2010年改正土壌汚染対策法(土対法)の施行後5年見直し規定を踏まえ、中央環境審議会において土対法の見直しの審議を行っている。

そのなかで、未調査の土地の汚染の捕捉を強化するため、調査の一時的免除中または操業中の施設の敷地において、一定規模以上の土地の形質変更を行う場合に届け出を義務づけ、必要に応じて調査を実施する方向が示されている。また、リスクに応じた合理的な規制を導入すべく、臨海部工業専用地域の健康被害のおそれがない等の条件を満たした土地において、事業者による自主管理の内容を知事が承認した場合、形質変更について、年1回程度、事後的に届け出ることができる特例の新設も検討されている。

■ 生物を用いた水環境の評価・管理(改善)手法

15年11月に環境省は、生物を利用した排水評価・管理(改善)手法の課題を明確化した報告書を公表し、意見を募集した。その結果を踏まえ、今年6月、「生物を用いた水環境の評価・管理手法に関する検討会」を設置した。

これまでの検討会の議論では、現時点で考えられる同手法の意義を、事業場が自らは予期や認識をしていなかった排水の生態リスクを把握し、その結果を踏まえて排水に含まれる生態毒性を有する化学物質の削減(排水改善)を自主的に行うことを可能とする場合がある等、従来の排水基準を遵守する事業者の取り組みを補完するものとしている。

今後は、同手法の活用を考える事業場にとっての課題等についての実態調査を目的としたパイロット事業等を実施し、その結果を踏まえ、同手法を用いる場合の活用のあり方等について議論を進め、18年度をめどに中間取りまとめを行う予定としている。

■ 海洋ごみ対策

海岸漂着物の円滑な処理および発生の抑制を図り、海岸における良好な景観および環境を保全することを目的として、海岸漂着物処理推進法が09年に施行された。

同法に基づき、都道府県や市町村等が実施する海洋ごみに関する地域計画の策定や対策事業(回収・処理、発生抑制)に対し、財政上の措置を講じている。また、全国の海岸においてモニタリング調査を実施するとともに、漂流ごみの目視調査、海底ごみの採取、海洋中・海岸におけるマイクロプラスチックのモニタリングを実施している。

■ 水銀の大気排出対策

13年10月に採択された水俣条約は、50カ国締結の90日後に発効することとされており、今月15日時点ではわが国を含む35カ国が締結している。わが国では、国内担保措置として、大気汚染防止法のもとの規制対象施設における排出基準や要排出抑制施設等に関し、大気汚染防止法施行令・施行規則を改正した。

<意見交換>

その後の意見交換では、土壌汚染対策法の見直しについて、未調査の土地の土壌汚染の捕捉が強化されれば産業活動に影響が及ぶとの懸念が表明された。生物を利用した排水評価・管理(改善)手法に関しては、パイロット事業を行うのであれば、手法のメリット・デメリットを評価するため、事業に要した費用を明示すべきであり、また並行して諸外国の制度を精査すべきとの意見が出された。

【環境エネルギー本部】