Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年3月16日 No.3308  「ゴールデン・スポーツイヤーズを通じたスポーツ成長産業化と社会課題解決」 -昼食講演会シリーズ<第33回>/早稲田大学スポーツ科学学術院教授 間野義之氏

経団連事業サービス(榊原定征会長)は2日、東京・大手町の経団連会館で第33回昼食講演会を開催し、早稲田大学スポーツ科学学術院教授の間野義之氏から、「ゴールデン・スポーツイヤーズを通じたスポーツ成長産業化と社会課題解決」をテーマに講演を聞いた。間野氏の講演の概要は次のとおり。

■ ゴールデン・スポーツイヤーズ

2019~21年は「ラグビーワールドカップ」「東京オリンピック・パラリンピック」「関西ワールドマスターズゲームズ」が3年連続で開催され、日本はゴールデン・スポーツイヤーズを迎える。世界の注目が日本に集まり、多くの人々が日本を訪れるこの期間には大きな経済効果も見込まれ、地域経済を活性化させていく絶好の機会といえる。このまたとないチャンスを契機にポジティブなレガシー(遺産)をつくり残していくべきである。

■ レガシーとしてのスポーツ成長産業化

スポーツ庁と経済産業省が共同で創設した「スポーツ未来開拓会議」ではスポーツの成長産業化をレガシーとして残すべく、「スポーツ産業ビジョンの策定に向けて」という中間報告を発表した。スポーツで稼ぎ、その収益をスポーツへ再投資する自律的好循環の実現を目指し、スタジアム・アリーナのあり方、経営力の強化、新ビジネス創出の促進、人材育成、スポーツ人口の拡大などの課題について方向性を示し、具体的な取り組みを掲げている。「日本再興戦略2016」にも初めてスポーツという言葉が入り、2025年にはスポーツ市場規模を現在の約3倍となる15兆円に拡大させるという数値目標を掲げている。

■ スタジアム・アリーナ改革

スポーツの成長産業化に向けて、まず着手すべきは「スタジアム・アリーナ改革」である。日本のスタジアムは、従来のようなスポーツを「する」という目的だけの単機能型ではなく、欧米のように複合的な機能を備え、試合のない日にも収益を上げられるような施設へと変えていくべきである。そのためには各自治体のさまざまな条例や制限を見直すことも必要となる。東京ドームシティは野球場以外にもさまざまな施設を備えて利益を出しており、日本の多機能複合型のスタジアムの1事例である。

■ スマート・ベニューによる社会課題の解決

このような多機能複合型の施設を中核とした街づくり「スマート・ベニュー」を地域活性化への原動力として、もっと活用していく必要がある。郊外に多機能複合型のスタジアムを置くことで、その周辺の公共交通機関が一体的に整備され、雇用も創出される。地域のブランド力が高まり、集合住宅の建設によって人口増加がもたらされ、経済の活性化にもつながるという好循環が見込まれる。また、災害の多い日本では、このような施設を市街地に置くことで、避難場所や仮設住宅の設置場所としても活用ができる。

■ 今後のスポーツ産業の可能性

すでにビジネスとして展開されているスポーツツーリズムをはじめ、スポーツを食、IT、健康などと融合することで、さまざまなビジネスの可能性が広がってくる。これまで「スポーツは学校教育の一環であり収益に結びつけてはいけない」と考えられていた。しかし見方を変えれば、まだ十分に成長できる産業である。官民が一体となって日本のスポーツ産業を盛り上げていくべきである。

【経団連事業サービス】

昼食講演会 講演録はこちら