Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年6月1日 No.3317  わが国におけるLGBTへの対応の重要性と教育に関する取り組み -馳衆議院議員(LGBTに関する課題を考える議員連盟会長)が講演/女性の活躍推進委員会

講演する馳議員

経団連は5月11日、東京・大手町の経団連会館で女性の活躍推進委員会(伊藤一郎委員長、吉田晴乃委員長)を開催した。自民党の馳浩衆議院議員(LGBTに関する課題を考える議員連盟会長)から、わが国におけるLGBTへの対応の重要性と教育に関する取り組みについて講演を聞いた。冒頭、伊藤委員長があいさつし、わが国がイノベーションを通じて社会全体の生産性向上を図るためには、LGBTを含めあらゆる人々が、企業をはじめ経済社会のさまざまな分野で活躍し、その能力を最大限発揮できるような「ダイバーシティ・インクルージョン社会」を実現していくことが重要だと述べた。馳議員の講演の概要は次のとおり。

■ わが国におけるLGBTへの対応の重要性

かねてより海外ではLGBTへの対応が進んでいる。IOC(国際オリンピック委員会)の倫理規定では、性自認・性的指向に基づく差別を禁じている。2014年のソチ・オリンピックの際には、ロシアで同性愛者に対する差別的な法律が成立したことを理由に、ドイツのメルケル首相や当時のアメリカのオバマ大統領らが開会式をボイコットした。

一方で、これまでの日本では、LGBTの問題や性自認・性的指向の問題が公の場で議論されたことはなかった。何らかの法規制や指針がなければ、職場などでLGBTについての取り組みを進めることが難しい。そこで、まずは国会議員による私的な勉強会をスタートし、その後15年に超党派による議員連盟を立ち上げた。

■ 教育に関する取り組み

教育現場におけるLGBTの児童への丁寧な対応を進めるべく、下村博文文部科学大臣(当時)と連携し、15年4月に、全国の教育委員会に対し、子どもの発達段階に応じて慎重に対応するよう通知を発出した。これがきっかけとなり、昨年4月に文部科学省から「性同一性障害や性的指向・性自認に係る、児童生徒に対するきめ細かな対応等の実施について」という中央省庁初のガイドラインが公表された。さらなる取り組みを目下検討しているところである。

教育現場においてLGBTへの対応を進めるにあたり、例えば、小学校にいきなりLGBTの当事者が訪れて児童に説明をするというのは現時点では難しい。教育委員会や学校の管理職、養護教員、スクールワーカーなど専門性をもつ層の理解を深める必要がある。適切な対応に向けて、まずは現場の錬度を高めなくてはならない。それがあって初めて、児童や保護者の理解を得るための取り組みが可能となる。

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その後の意見交換では、LGBTに関する日本の取り組みが海外に比べ進んでいない現状や、教育現場におけるLGBTの児童への配慮などについて、活発な意見が出された。

【政治・社会本部】