Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年6月15日 No.3319  行政手続コストの削減に向けた規制改革推進会議の取り組み聞く -行政改革推進委員会

経団連は5月23日、都内で行政改革推進委員会(山本正已委員長)を開催し、規制改革推進会議行政手続部会の髙橋滋部会長から「行政手続コストの削減に向けた規制改革推進会議の取り組み」について説明を聞いた。概要は次のとおり。

■ 検討の背景・経緯

政府の成長戦略「日本再興戦略2016」(2016年6月2日閣議決定)には、GDP600兆円経済の実現に向けて、わが国のビジネス環境を改善し事業者の生産性向上を図るため、カギとなる施策として「事業者目線で規制改革、行政手続の簡素化、IT化を一体的に進める新たな規制・制度改革手法の導入」が盛り込まれた。

そこで、昨年9月に発足した規制改革推進会議では、同会議の下に「行政手続部会」を設置し、諸外国の先行事例の調査や事業者からの聞き取り調査、経済3団体を対象としたアンケートの実施等を行い、半年にわたって検討を重ねた。

■ 規制改革推進会議における総理指示

3月29日に首相官邸で開催された規制改革推進会議において、行政手続部会の取りまとめが報告・了承された(図表参照)。当日は、榊原定征会長はじめ経済3団体の長が出席して意見陳述を行うとともに、共同提言を提出した。

これを受け、安倍総理は、(1)2020年までに事業者負担の重い分野で行政手続コストの20%以上の削減を目指す(2)すべての分野で「行政手続簡素化の3原則」を徹底する(3)各省庁が6月までにコスト削減に向けた基本計画を策定・公表し、規制改革推進会議が進捗を管理する――ことを指示するとともに、地方公共団体に対しても、国の取り組みと連携して自らの手続を改善するよう協力を要請した。

「行政手続部会取りまとめ」のポイント
1.行政手続簡素化の3原則(横軸の取り組み)
  1. 行政手続の電子化の徹底(デジタルファースト原則)
    電子化が必要である手続については、添付書類も含め、電子化の徹底を図る
  2. 同じ情報は一度だけの原則(ワンスオンリー原則)
    事業者が提出した情報について、同じ内容の情報を再び求めない
  3. 書式・様式の統一
    同じ目的または同じ内容の申請・届出等について、可能な限り同じ様式で提出できるようにする
2.重点分野(縦軸の取り組み)
(1)営業の許可・認可 (2)社会保険 (3)国税 (4)地方税 (5)補助金 (6)調査・統計に対する協力
(7)従業員の労務管理 (8)商業登記等 (9)従業員からの請求に基づく各種証明書類の発行
3.削減目標 ※原則2020年3月まで
行政手続コスト(事業者の作業時間)を20%削減
 ※ 国税、地方税など、一部例外あり
(出典)「行政手続部会取りまとめ」より経団連事務局作成

■ 今後の取り組み

総理指示を受け各省庁は現在、6月末に向けて基本計画の策定に着手している。行政手続部会は、策定された基本計画の内容を精査したうえで、今秋以降、各省庁からの聞き取り調査を集中的に実施し、必要な改善を求めていく。行政手続部会の見解や基本計画策定後の取り組み状況を踏まえ、各省庁は来年3月までに基本計画を改定する。その後も、行政手続部会が目標達成に向けて計画の履行状況のフォローアップを行う。

政府を挙げた行政手続コストの削減に向けては、事業者目線でのチェックやレビューが不可欠である。取り組みを実効あるものとするため、事業者には引き続きの協力をお願いする。

<質疑応答>

出席者から、(1)経団連が求めている行政手続のワンストップ化への対応(2)ワンスオンリーの実現に向けた取り組みの対象範囲――について質問があった。これに対し髙橋氏からは、(1)内容としてワンスオンリーと重なっており、実質的な意味でワンストップを実現していきたい(2)同一省庁内や同一地方公共団体内は当然のこととして、政府横断かつ国と地方をまたがった取り組みを考えている――との回答があった。

【産業政策本部】