Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年6月22日 No.3320  提言「第3期教育振興基本計画に向けた意見」を公表

経団連は6月20日、提言「第3期教育振興基本計画に向けた意見」を公表した。昨年4月には、中央教育審議会(中教審)における「第3期教育振興基本計画(2018~22年度)」の検討開始に先立ち、「今後の教育改革に関する基本的考え方―第3期教育振興基本計画の策定に向けて」を公表している。今回の提言は、中教審が今年1月に公表した「第3期教育振興基本計画の策定に向けた基本的な考え方」に基づき、教育問題委員会においてあらためて「第3期計画」に向けた産業界の問題意識や考え方を整理し、取りまとめたもの。

1.第2期計画の課題と第3期計画の改善点

提言ではまず、第2期計画の課題と第3期計画に向けた改善点を整理した。第2期計画では、育成したい素質・能力(「成果目標」)と、それを測る「成果指標」との関係がわかりにくく、さらに成果指標の達成目標に「トップレベル」「改善」などの文言が多用され、具体的に評価できないものとなっている。

そこで第3期計画では、「成果目標」「成果指標」ともに項目を厳選し、現実的にPDCAサイクルを回せるロジック・モデルを作成すること、成果指標には客観的に評価し得る基準を設定すること等を求めた。

また、教育政策のなかには定量的に効果を測りにくいものもあるため、政府は、各教育機関が第2期計画への取り組みを評価する際に参考にできるよう、地方自治体や学校現場から第2期計画における具体的施策の好事例を広く集め、全国に共有・横展開するよう求めた。

2.第3期計画で重視すべき課題

続いて、第3期計画で重視すべき課題について整理した。

第1に、2020年から改訂学習指導要領に基づき小学校から順次開始される、いわゆる「アクティブ・ラーニング」については、形式だけの導入とならないよう、成功事例の共有など、政府が教員による実施を支援するよう求めた。

第2に、英語力に関しては、第2期計画の成果指標は、中学・高校ともに達成困難な状況であることから、第3期計画では、(1)地方自治体ごとに英語力の目標を設定し(2)学校の指導体制を充実させ(3)定期的な英語力調査で児童・生徒の英語力を確認し(4)結果に基づき目標を見直す――というサイクルを回すよう求めた。

第3に、双方向の留学生交流については、第2期計画の留学生の受け入れ・送り出し人数の倍増という目標達成は厳しいことから、第3期計画では、受け入れ・送り出しともに留学目的ごとの目標数を設定するなど、戦略的な留学生政策の策定を求めた。

また、教育政策を推進するための基盤整備としては、ICT環境の整備と、改訂学習指導要領に沿って児童・生徒の課題設定、解決力を伸ばすための「新しい教育課題」に対応できる教員の養成・確保のための取り組みを求めた。

3.教育投資の必要性

最後に、家計所得と子どもの学力や大学進学率に相関関係がみられるため、提言では、政府に対して就学前教育の無償化の迅速化や、高等教育へのアクセスが確保される制度の整備を求めた。さらに、日本の公財政教育支出の対GDP比や教育支出に占める公財政負担割合も、就学前教育と高等教育ではOECD平均を下回ることから、教育への公的支出拡大を訴え、財源は国民から広く薄く負担を求める観点から税財源とするよう求めた。

経団連では今後、同提言の内容が「第3期計画」に反映されるよう、関係方面に働きかけを行う予定である。

【教育・CSR本部】