Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年8月10日 No.3327  持続可能な開発のための国連会議参加報告(その1) -社会のトランスフォーメーションを目指すSDGsとSociety 5.0

ガス国連事務次長補(右)と二宮委員長

経団連では持続可能な開発目標(SDGs)への取り組みを推進しており、国連の「持続可能な開発のためのハイレベル政治フォーラム(HLPF)」にあわせて、7月17日から21日にかけて、企業行動・CSR委員会(三宅占二委員長、二宮雅也委員長、津賀一宏委員長)の二宮委員長をはじめ8社15名がニューヨークを訪問した。

日本政府主催のイベントやビジネスフォーラムなどへの参加に加え、個別にヒアリングを行い、SDGsをめぐる最新の動向やグローバル企業の取り組み状況について情報収集するとともに、人的ネットワークを構築した。その模様を2回にわたって掲載する。(その2はこちら

今回は、国連においてSDGsの推進を担当する経済社会開発局のトーマス・ガス事務次長補との懇談について報告する。懇談の概要は次のとおり。

■ 人間を中心に据えた未来社会を目指すSDGs

SDGsは、国連機関における行動計画や戦略ではなく、人間性に関する国際社会共通のビジョンである。数千のNGO、企業、アカデミアが議論に参加しただけでなく、500万人を対象とした個人アンケートも踏まえて策定された。

SDGsは、「どのようにして目標を達成するか」という処方箋ではない。各国、各組織がビジョンを持ってSDGs達成にどう貢献していくか戦略を策定していく。またその戦略に基づく取り組みの効果を共通のビジョンに対して測定していくことで、正しい方向に向かっているかどうかを知ることができる。

■ 社会のトランスフォーメーションを目指すSDGsとSociety 5.0

SDGsの17の目標はすべて相互に関連しており、全体で地球社会を持続可能な次の段階に変容させるものであり、経団連の提唱するSociety 5.0の考えと共通している。SDGsの各指標にチェックボックス的なアプローチで取り組むと、「木を見て森を見ず」になり、社会全体のトランスフォーメーションは生まれない。

SDGsは、先進国に対して特別なメッセージを発信している。社会制度が整い、産業も発達し、CSRへの取り組みが進んでいる先進国に、パラダイムの変革を求めているのである。その本質は相互依存性にあり、どんな国も、どんな企業も国境や組織の壁を越えてつながっていることを認識する必要がある。もし特定のグループが取り残されるのであれば、持続可能な発展とはいえない。

■ SDGsの理解促進に向けた企業への期待

企業に期待するのは、すべての目標や指標に対応することよりも、SDGsの「人間尊重」という原則や、それぞれの相互関連性も含め、SDGs全体への理解を普及していくことである。そのうえで、169の指標のなかで各社が大きなインパクトを与えられるもの、優先すべきものを選んで取り組んでいただければよい。

【教育・CSR本部】