Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年8月10日 No.3327  ワシントン・リポート<6> -今こそ日米相互依存の現実を発信すべき

トランプ政権は8月半ばからNAFTAの再交渉に入るが、すでにNAFTAに基づき構築されたサプライチェーンへの影響が懸念されている。あわせて、1962年通商拡大法232条に基づき安全保障の観点から鉄鋼の輸入制限が実施されると、貿易相手国によるWTO提訴、対抗措置の発動、さらには輸入鉄鋼利用業界への悪影響などを誘発しかねず、トランプ政権はレトリックを政策化することの難しさをあらためて痛感することになろう。

その意味では、トランプ政権の対日貿易赤字や日米FTAへの対応が注目される今こそ、日米相互依存関係の現実をトランプ政権の政策立案者はもとより、日米の関係者が広く再認識する必要がある。そこで米国事務所では7月20日、East-West Center(1960年に米国議会が創設した調査・研究機関)が、The Sasakawa Peace Foundation(SPFUSA、笹川平和財団)の協力のもと作成した小冊子「Japan Matters for America /America Matters for Japan(日米相互依存の見取図)」の改訂と活用方法について意見交換を行った。

East-West Centerワシントン支部のサトゥ・リメイェ所長は、「70年の歳月をかけて、日米は単なる同盟国にとどまらず、真のパートナーとなり、友達となった」というオバマ前大統領の言葉に始まり、政治、経済、安全保障、人的交流での日米の特別な関係を示す同冊子は、議員、スタッフの訪日の際などにすでに活用されており、改訂したうえでさらなる活用を目指したい、と説明した。

SPFUSAのジム・ズムワルトCEOからは、安全保障面での日米関係の重要性に対して、経済関係の重要性についての認識が十分でないとの指摘があった。これに対して参加者からは、経済関係こそ非常に密接な相互依存関係にあることを考えれば、認識が十分でない原因としてPR不足が否めないとの反応があった。

特にトランプ政権下では、日本企業が米国各地に根ざした活動を通じて、経済、社会に貢献してきたこと、そして、今後ますます貢献し得ることを粘り強く発信していくことが重要になっている。そこで同冊子を活用するためには、改訂の際、投資実績のみならず、投資を決定した理由、実績を上げてきた背景を示す、日本企業が取り組むフィランソロピー活動なども盛り込む、一般の米国人にも幅広く読んでもらい理解してもらえるよう表現などにも工夫する、といった点が提起された。さらに、各社ベースで、対米投資の歴史、現地企業とのネットワークなどをまとめているケースもあり、それらを集めて閲覧できるようにするアイデアも出た。

日米相互依存関係を示す資料はさまざまに取りまとめられているので、まずはそれらを活用して発信しながら、資料の改善も図っていくことが現実的だと感じた。

(米国事務所長 山越厚志)