Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年8月31日 No.3328  持続可能な開発のための国連会議参加報告(その2) -SDGsはBDGs(ビジネス開発目標)

国連の「持続可能な開発のためのハイレベル政治フォーラム(HLPF)」にあわせて、7月17日から21日にかけて、経団連の企業行動・CSR委員会(三宅占二委員長、二宮雅也委員長、津賀一宏委員長)の二宮委員長をはじめとする代表団が日本政府や産業界のイベントへ参加するとともに、個別ヒアリングを行った(前号既報)。
今回は、産業界のSDGsのとらえ方、取り組み状況について報告する。

■ 産業界のSDGsへの関心の高さ

国際商業会議所(ICC)、国連グローバル・コンパクト(UNGC)(注1)などが共催した「SDGsビジネス・フォーラム」は、参加者が前回の3倍の約千人に上ったため、急遽、会場を変更し国連総会ホールで開催された。このことは、企業側の参加意欲と国連側の企業セクターへの期待とコミットメントを示している。

同フォーラムの開会あいさつで、ダニロビッチICC事務総長は、「SDGsは大きなビジネス機会をもたらすBDGs(ビジネス開発目標)でもある。SDGsの達成は、環境、エネルギー、都市開発などにおいて12兆ドルのビジネスを生むと試算されている」と述べた。

■ SDGsを経営戦略に取り込む段階へ

産業界のイベントへの参加を通じて、企業の取り組みとしては、SDGsの17目標のどれに貢献しているか、もしくは貢献できるかを整理し終えた段階である。次の段階として、各社は経営戦略にSDGsを組み込んで、取り組みの効果測定と報告、連携のためのプラットフォーム構築に移りつつあることがわかった。

例えば、ダノンのパルメイロ持続可能性統合担当ディレクターは、「事業のすべてに持続可能性の視点を入れ込んでいる。実践にあたっては、ローカルレベルで社会のニーズと消費者の好みを把握しつつ、地元NPOなどと連携して取り組んでいる」と自社の事例を紹介した。タタ・サンズのシャピロ北米担当社長は、「SDGsを事業戦略の中核に据えている。イノベーションがカギであり、AI(人工知能)やIoTを活用したデジタル・ヘルスのプラットフォーム、農業のスマート化、クリーンエネルギーなどの分野にR&D投資をしている」と述べた。

■ ビジネス団体の役割はSDGsの普及とプラットフォーム提供

UNGCとGRI(注2)は、SDGsに関する企業向けの報告の枠組みを9月に公表予定である。これは、各社のSDGsへの取り組みの効果を評価し、ベンチマークするための、業界横断的で統一された報告の枠組みを目指している。

また、米国国際商業会議所(USCIB)では、ウェブサイトを立ち上げ、50カ国49社からのSDGsへの取り組み事例を紹介している。他方、持続可能な開発のための経済人会議(WBCSD)では、SDGsの目標別に業界横断的な目標達成に向けたオープンイノベーションを起こすための企業、NPO、国際機関等のパートナーシップ構築を目指している。

これら経済団体に求められる役割は、概ねSDGsの普及、ベストプラクティスの共有、連携の達成のためのプラットフォームづくりであることがわかった。

(注1)国連グローバル・コンパクト(UNGC)=1999年にアナン国連事務総長が提唱したイニシアティブ。人権、労働、環境、腐敗防止の4分野・10原則を軸に活動を展開しており、160カ国で1万3千を超える団体が署名している

(注2)GRI(Global Reporting Initiative)=サステナビリティ報告に関する国際基準を策定している非営利組織

【教育・CSR本部】