Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年9月7日 No.3329  「SDGs時代のリーダーシップ」 -国連グローバル・コンパクトのキンゴーCEOが講演/企業行動・CSR委員会

講演するキンゴー氏

経団連(榊原定征会長)の企業行動・CSR委員会(三宅占二委員長、二宮雅也委員長、津賀一宏委員長)は8月21日、東京・大手町の経団連会館で国連グローバル・コンパクト(UNGC)のリサ・キンゴーCEOから「SDGs時代のリーダーシップ」と題する講演を聞くとともに、意見交換を行った。講演の概要は次のとおり。

■ 世界共通の新たな目標

2015年、国連総会において満場一致で、30年までに達成すべき新たな17個からなる持続可能な開発目標(SDGs)を採択した。SDGsは、成長に関する国際的な共通目標であると同時に、世界共通のKPIを設定するという意味で画期的なものである。また、SDGsの達成に向けて、政府のみならず企業の取り組みも主要な原動力であると位置づけられるなど、官民連携が強調されている点も意義深い。

■ SDGsに取り組む意義

今日、われわれを取り巻く環境は大きく変化し、さまざまな事象が複雑で相互に関連するようになった。このようななか、ビジネス環境もリスクとチャンスが複雑に絡み合っており、適切に対応していくことが求められている。

例えば、気候変動や海の酸性化、砂漠化、大気汚染などの問題の進行により、30年には世界人口の約半分が水不足に陥ることが見込まれる。また、現時点でも「太平洋ゴミベルト」(地理的に世界の海洋のゴミが集中する地域)の面積がフランスの国土と同じ大きさにまで増大し、日本周辺の海洋生物にまで影響を及ぼしている。このような環境面のリスクは、企業の経済活動の障害となる可能性が高い。

そのため企業は、自身の持続可能な成長という観点からSDGsの達成に向けて取り組む必要がある。特にSDGsの達成に向けた新たなビジネスモデルや技術の発展は、12兆ドルの市場機会を生み出すと見込まれており、企業のビジネスチャンスの観点でも有益である。企業のSDGsの達成に向けた取り組みが進めば、われわれの世代が、飢餓や貧困、気候変動などの課題を解決する最初の世代になるかもしれない。

■ 国連グローバル・コンパクトの取り組み

国連グローバル・コンパクトは、世界約160カ国以上の1万3000以上の企業・団体による持続可能な成長を実現するための取り組みである。特に、UNGCに署名する企業・団体は、人権の保護、不当な労働の排除、環境への対応、そして腐敗の防止にかかわる10の原則に賛同し、トップのコミットメントのもと、その実現を図っている。この10原則こそが企業のSDGsへの取り組みを推進するものと考えている。

■ 日本の取り組みへの期待

日本には、UNGCのローカルネットワークとして「グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)」が存在し、252の日本企業・団体が参加している。GCNJに参加している日本企業は、長期的に、10原則へのコミットメントや国内外でのSDGsの達成に貢献しており、誇りに感じる。

また、日本政府も「SDGs達成のロールモデルとなる」ことを表明し、SDGs達成に向けたマルチステークホルダーとの対話を行う「SDGs推進に関する円卓会議」を設立するなど積極的に取り組みを進めている。

われわれが直面する課題は、われわれ自身で解決していかなければならない。日本のSDGs達成に向けた取り組みに期待したい。

【教育・CSR本部】